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調査

「アイ、君はこの二人に疑われてどう思った?」

と、ミカエル様が言ってくる。


「どうと言いますか? 何故? ミカエル様は私が疑われるような言い方をされるのかが、気になりました」

と、藍が答えた。


「あっ! わざと昨日は私にアイを気付かせて今日の証言にされたのですか?」

と、ウルーナミ副隊長が言えば、


「侵入者も僕が仕込んだ事だと? 侵入者は予定外だけど、昨日ウルーナミに気付かせたことは、わざとだよ」


「えっ?」


「アイがこれから体験するだろうと思ったことの1つだ」

と、ミカエル様が答える。


「ミカエル様、それはアイの為ですか?」

と、ルカが聞いてくる。


「ザエーカルと、ウルーナミは真面目で信用している。僕が説明すれば問題は無いのは、分かっているけど僕が説明しなければ、どうなっていた?」

と、ミカエル様が問う。


「ミカエル様の説明が無い時には、アイが虚言をしていると思うでしょう」

と、ザエーカル隊長はさっきまでの自分の事を振り返る。


「アイが本当の事を証言しても、証明するには時間はかかるだろうね。1人で証明出来るかも分からないだろう。

ウルーナミは、昨日の報告書はどうした?忖度する必要はないと伝えたが」

と、ミカエル様が聞く。


「えっと、ちゃんと報告書にあげましたが……」

と、ウルーナミ副隊長は答えるが、


「ウルーナミ、昨日報告書の意味が分からないんだが、後で聞こうと思っていた」

と、ザエーカル隊長が言う。


「意味の分からない報告書は、無駄だね。何で意味の分かる報告書にしなかったんだ?」

と、ミカエル様が問う。


「いえ……あの……その……」


「僕は、ウルーナミが聞いてきたことは答えたよ。ルカが抱えているのは女性だと。何故抱えているのかは、寝ているからだと答えたよ」

と、ミカエル様が言う。


「ウルーナミ、そうなのか?」


「はい! でもそのまま報告書に出すには憚れたと言いますか……」

と、ウルーナミ副隊長が口ごもる。


「私をどう? 見られたのでしょうか?」

と、藍が問う。


「失礼ながら、ミカエル様が戯れに女性を連れ込んだと、正直に思いました。羨ましいなぁとも思いました」

と、ウルーナミ副隊長が答える。


「ウルーナミ………………」

と、弟の名を呼ぶ兄。


「アイ、二人の反応はどうだ? 僕はこの二人を信用しているし、これからも信用に置けると思っているよ。でも何も知らないアイの事になるとこんな反応になる」

と、ミカエル様が仰る。


「私が、これからアカデミーに通うとなると色々憶測や勘繰り詮索が有ると言うことですね」

と、藍が答える。


「そうだ、側にルカが付くといっても人は勝手な噂は流れるだろうね」

と、ミカエル様が言う。


「ザエーカル、ウルーナミ。今アイがこの部屋に侵入した者が居たと言っても、アイは顔を見ていない。声を聞いてない。

でも僕達は、アイが体験した事を信じられるし、危惧している。

目的が分からないことが難儀ではあるが、大事にすれば侵入したことを悟られない様にした筈が、相手は何故? バレたと考えるだろう」

と、ミカエル様が何故? 二人だけを呼んだか分かった。

ドア前をケビン様にしたことも、他の隊員なら探られるかも知れないが、ケビン様に探るものはこの団隊舎にはいない。


「ミカエル様、申し訳ございません。この第5団隊は、私が指揮しております。侵入者をのさばらせた責は私にはございます」

と、ザエーカル隊長が告げる。


「だから、大事にするなと言っている。相手はまんまと侵入出来たと思っているだろう。部屋にアイが居たと知らずにな」

と、ミカエル様が仰る。


「しかし、目的がアイと言う事はないでしょうか?」

と、ルカが問う。


「その線はあるが、アイは相手が何を探っていたかは見えてないだろ? 扉と壁に挟まれた状態では」

と、ミカエル様がわたしに顔を向ける。


「確かではございませんが、微かに紙が擦れる音はしました。

部屋の中は絨毯のせいで音は立てずに歩いていました。

ベット回りの生地ずれの音はしていました。

ケビン様がドアをノックされた時には、全く慌てること無く静かにベランダから出ていきました。部屋の空気が動いたので、それは確かだと思います」

と、藍が息を潜めた数分の事を思い出しながら答える。


「よく、冷静にそこまで意識しておれたことが大したものだ」

と、ザエーカル隊長は言ってくれるが、


「後から冷や汗は出てきましたし、足は力が入らなくなりました。相手がミカエル様でもルカでもないと分かった時は、怖かったと思います」

と、藍が流石に恐怖と思える感情だったと認識した。


「ミカエル様。言い訳になりますが、ここ最近は人の入れ替りがございました。審査はいつもの通りしておりますが、見落としがあったのでしょう」

と、ザエーカル隊長が言えば、ウルーナミ副隊長が、


「確かに、僕の知らない人間を何人か見かけましたが、第5団隊のバッチを付けていれば、疑ったりしませんね」

と、答える。


「ミカエル様、そのアイがアカデミーに通うというのは?」

と、ウルーナミ副隊長が聞いてくる。


「そのままだが、文官資格を取得する為に編入するということだ」

と、ミカエル様が説明すれば、


「待ってください。失礼だがアイの年齢は?」

と、ザエーカル隊長がきいてくる。


「23歳です」


「「……???……」」


「あの~~ぅ、私の年齢が問題なのは知っていますが、資格取得する試験を受けるのであって通う事にはならない予定ですよね。ミカエル様?」


「一様、その予定なんだが、不安になってきた……」

と、ミカエル様が言ってきた。


「アイの学力的には、大丈夫だと思いますが」

と、ルカが尋ねれば、


「ルカは、アカデミーを卒業して何年になる?」


「5年でしょうか?」


「教育科の教員に変動はあったか?」


「いえ…………変動は……どうでしょう……」


「ゾーイ先生は、現職なんだろうなぁーー」

と、ミカエル様が言えば、


「あっ!……」

と、ルカが溢した。


「まぁ、先生方の事はシアン国王陛下に任すしかないが、さて。侵入者の事をどう処理するか」

と、ミカエル様がザエーカル隊長に向き合う。


「人選の見直しを致します」

と、ザエーカル隊長が言えば、


「長年勤めてくれている者もですか?」

と、ウルーナミ副隊長が聞く。


「勿論だ。移動で第5から離れた者達もだ」

と、ザエーカル隊長は答えた。


「ザエーカル、ウルーナミ悪いが見直しはして欲しい。領内の出入り業者全てだ。

ダーニーズウッド領主邸にも侵入者がいた」


「「えっ?…………」」

と、隊長、副隊長がルカを見る。ルカが頷くと


「えっ? そうなのーー」

と、藍がルカに聞く。


「うっ!」「あっ!」

と、ミカエル様とルカが声が漏れた。


「ミカエル様の婚約者を探っている商会があったと、聞きましたがその事ですか?」

と、藍が言えば、


「そんなことが有ったのですか?」

と、ザエーカル隊長が聞いてくる。


「その件は、第1、4団隊が対応済みだ」

と、ミカエル様が言えば、


「それは、王都のサイガール商会と他領のロカ商会の事ですか?」

と、ウルーナミ副隊長が聞いてくる。


「そうだ、第4団隊から報せは来ているようだな」

と、ミカエル様が確認する。


「事情は分かりませんが、関所には入領禁止名簿に名が有りましたので、荷物の許可は出しても人の許可が出ない分類でしたので、領内で何か仕出かしたのかと思っておりました」

と、ウルーナミ副隊長は感想を伝えた。


「ミカエル様、その商会は侵入者でしたら、それだけで済んだのですか?」

と、ザエーカル隊長が問う。


侵入者だったなら、入領禁止だけでは済まない筈だ。人も荷物も通す訳には行かない。


「この際だ、次期領主として警告しておく。

その商会を隠れ蓑にした別の侵入者が居たことは分かっている。

今回と同じで目的は不明だが」

と、ミカエル様が答えた。


「それでは、見直しは必然ですね」

と、ザエーカル隊長が言えば、ウルーナミ副隊長は大きく頷いた。


「ザエーカル、ウルーナミ二人に後は任せた。父上には私から報告するが、経過は報告を怠らずに頼む。

意味が分かる報告書を寄越してくれよ、ウルーナミ副隊長」

と、ミカエル様が仰れば、


「はい!」

と、ブーツの踵をバシッと合わせたウルーナミ副隊長が返事する。

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