表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/93

証明

「ケビン、どういうつもりなんだ?」

と、ミカエル様が異母弟を見ながらわたしの隣に座る。


「異母兄さん、僕がアイの隣がいいのに。姉上がルクールに手配をしているのを聞いたんだ。

それにちゃんと父上に許可は取ったよ。流石に僕も無断でそんな行動はすれば、どうなるかこの前で理解したから」

と、ケビン様が手紙をミカエル様に渡す。


ミカエル様が封蝋された手紙を受け取り中を改める。手紙に目を通してそのままわたしに渡された。


……えっ? 読めってこと?


領主ロビン様には、まだお会いしたことがないが、丁寧な文字で簡単だか事のあらましが書いてあった。

別邸では、シアン国王陛下から託された娘をダーニーズウッド家で保護することを使用人達に通達したところ、やはり、ミカエル様の婚約者と認識されていること。

メアリー様が侍女長 メグさんに無事に孫が生まれた経緯を報告すれば、かつての仲間であるクルナさんを心配していた使用人達が、わたしが別邸に来るのを楽しみにしていることを知らせる内容だった。

急に大歓迎に驚いては困ると知らせたが、ケビン様が煩いので使いに出したと、ある。


……成る程、わたしの事を知っているのは、別邸では、ミカエル様とルカだけなんだ。ロビン様にはシアン国王陛下から知らせると聞いていたが、期待させて後でがっかりさせるのは、申し訳ないけど……


読み終えた手紙を封に戻せば、ミカエル様が察して受け取る。色々申し訳ないなと思っていると、ノック音がした。


「入れ」

と、一言ミカエル様が言えば、ドアを開けてルカと昨日お会いした隊員さんに似た壮年の男性が入ってきた。


昨日の隊員さんが、ルッツさん位と思ったが、今部屋に入ってこられた隊員さんは、ウースさん位だと思った。


……ご兄弟なのかなぁ。深緑の髪色が同じで目元がそっくりだ。


「ミカエル様、ルカからお呼びと伺いましたが、何事でしょうか?」

と、ケビン様とわたしに視線を向ける。


「ザエーカル、ウルーナミが来てから話そう。ケビン、部屋の前でウルーナミが来たら報せろ」

と、ミカエル様がケビン様に命じる。


えっ?という顔を一旦したが、いつもの異母兄の優しさがない声で言われた事に、黙って従った。

それには、わたしも隊員さんも驚いたが、隊員さんはわたしに視線を向けるでなく、部屋の隅から隅へと見回している。

次期領主 ミカエル様はこの地では、二番目に偉い人物となるが、今までの人当たりの良さから厳しいイメージはない。


……ミカエル様は要兄みたいだなぁと思っていた。優しくて人任せにしているように見せかけて、裏で暗躍顔をするような……反対に浅葱兄は、表が厳しく人当たりが冷めているように見えて、心配性で心情を出すのを躊躇う。どちらも天邪鬼。

ミカエル様は、優しさを出すけど義務的な気の使い方だと感じていた。が、遠慮が……無くなった? 身内と分かったから?


そう待たずしてドアからノック音がして、


「ウルーナミが到着しました」

と、ケビン様の声がした。


「入れ」

と、ミカエル様が言えば、昨日お会いした隊員さんが、ドア前にいるケビン様と部屋にいるわたしへと視線を交互させ、戸惑っている。


「ケビン、ドア前を護っているか、入室して、一切の言動も許されないか選べ」

と、ミカエル様がケビン様に顔を向けずに聞いてきた。


「ドア前を護ります」

と、言って隊員さんを客室に促し、ドアを閉めた。


「アイ、紹介しょうか。警護第5団隊長のザエーカル·ロットエアール子爵だ。副隊長のウルーナミ·ロットエアール子爵は昨日会ったな」

と、ミカエル様に二人の隊員さんを紹介される。


「辰巳 藍です。宜しくお願いします」


「「タツミ? アイ?」」

と、お二人は声を揃えて聞いてきた。


「アイの事は後で説明するが、この部屋に侵入したも者がいる。心当たりは?」


「「はぁ?」」

と、お二人は同時にわたしを見る。


……ミカエル様……説明なくて侵入者って……わたしになるでしょ…………


「ミカエル様、それはそこのアイ?では?」

と、ザエーカルさんは問う。


「いえ、兄上、彼女は昨日からミカエル様と一緒にいましたから違います。彼女以外ということですか?」

と、ウルーナミさんが答えると、


「えっ? 一緒に?」


「でも、それを知っているのは、多分僕だけですか?」

と、ウルーナミさんがミカエル様に視線を向けて聞く。


「おそらくな、侵入者は、何を目的にこの部屋に入ったのか。アイの話では何かを探っていたらしいが」

と、ミカエル様が答える。


「恐れながら、そのアイの勘違いではないですか? 第5団隊舎に侵入するなんて考えられないのですが」

と、ザエーカルさんは答える。


「いや、侵入者はいた。それは間違いはないです」

と、ずっと黙っていたルカが言う。


「では、アイとやらその侵入者をいつ見たのですか?」


「いえ、見ておりません」


「見てないのに、侵入者だというのですか? ミカエル様、何か無くなったものは?」

と、ザエーカルさんはミカエル様に問う。


……明らかにわたしは疑われているよね。


「はぁ~つ! これ以上は、アイの名誉のために言っておくが、このアイはシアン国王陛下の知己の孫娘になる。陛下からダーニーズウッド家で預かって欲しいと、二月前から領土のダーニーズウッド邸に滞在していた。前領主祖父も承知の事だ」

と、ミカエル様が憮然に答える。


「シアン国王陛下は、ご存知だと」


「当たり前だ。ドア前にいるケビンも会っている。アイの身元はシアン国王陛下によって証明されている」

と、ミカエル様が追加で証言される。


「では、侵入者というのは何を根拠にお考えですか?」

と、ザエーカルさんがわたしを見ながら問う。


「私が、おかしいと思ったのはミカエル様とルカはシアン国王陛下の見送りに部屋を留守にしていた時です。続き部屋を昨日使用したので、片付けをしておりました。

客室から僅かに物音がしたので、ミカエル様かルカが戻って来たと思っていたのです。

でもお二人なら、私が客室にいないとしたら必ず探す筈なんです」


「必ず? 探す? のですか?」

と、ウルーナミが聞き返す。


「アイがいなければ、必ず探すな」

と、ミカエル様が言えば、ルカも頷く。


「でも、部屋に入って来た人は私に声も掛けず、部屋を歩いている気配がしたので、念のため用心をしながら扉に近付いたら、誰だか分かりませんが、扉を開けられ私は壁と扉に挟まれて全く見えない状態でした」

と、説明すれば、ザエーカルさんは続き部屋をの扉に注視する。


「よく、悲鳴なり声を出しませんでしたね」

と、ウルーナミさんが感心して言ってくるが、


「何が目的なのか分からないですから、息を潜めてました。直ぐにケビン様がドア前で声を掛けられてその侵入者は、ベランダから出ていったようです」

と、藍が説明すれば、ザエーカルさんが立ち上がりベランダへと足を向ける。


窓から覗いたザエーカルさんが、

「ウルーナミ!」

と、呼びウルーナミさんも直ぐに駆け寄る。

二人が目にしているのは、わたしが見つけた足跡だ。


「アイ、先程から失礼な態度をしたことを謝罪します」

と、ザエーカル隊長が謝りの言葉をかけてくれる。


「分かればいい、ザエーカル、ウルーナミはどう考える?」

と、ミカエル様が二人に問う。


「油断していたわけではございませんが、この時期はシアン国王陛下の恒例な異動です。陛下の事を探る者でしょうか?」

と、ザエーカル隊長が答えると、


「シアン国王陛下は、王位を王太子ダニエル殿下に譲位されることが、国内外に知れております。今陛下の何かを探るとしても国政に影響は無いかと考えますが」

と、ルカが答える。


「でしたら、ミカエル様が狙われたのでは?」

と、ウルーナミ副隊長が言う。


「あり得ることだけどな、僕には異母弟が二人いるんだよ。ダーニーズウッド家がどうなることはないけど?」


「では?」

と、ザエーカル隊長さんが、わたしを見る。


「私ですか?」


「アイ、君はこの二人に疑われてどう思った?」

と、ミカエル様が言ってくる。


「どうと言いますか? 何故? ミカエル様は私が疑われるような言い方をされるのかが、気になりました」

と、藍が答えた。


「あっ! わざと昨日は私にアイを気付かせて今日の証言にされたのですか?」

と、ウルーナミ副隊長が言えば、


「侵入者も僕が仕込んだ事だと? 侵入者は予定外だけど、昨日ウルーナミに気付かせたことは、わざとだよ」


「えっ?」


「アイがこれから体験するだろうと思ったことの1つだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ