泣き虫アイドルちゃんと僕
Twitterで「アイドルちゃんが好き」と呟いた記念に(?)
それでは、どうぞ。
――午前11時。秋葉原。
「……たく、久保のヤツ。遅いな。」
高校生の僕は、休日に友達の久保とアニメショップに行こうとしているところだ。
既に1時間は待たされている。どういう事だよ。
その時、携帯の通知音が鳴った。メッセだ。
久保からだ。
『予定が入りました 来れなくなっちまったぜ……テヘペロ』
1時間待たせておいてこれかよ!
……まあ、怒っても仕方がない。
一人で、アニメショップに向かう。
その道中だ。
「ふ、ふぇぇ……プロデューサーしゃん、一枚も配れませぇぇん……」
小さなスタジオの入り口で、一人の少女がスーツ姿の男性にそう言っている姿が見えた。
スーツ姿の男性を『プロデューサー』って言っているから、あの子……アイドル?
「……ちほ、始めて1ヵ月だぞ。もっと頑張ってよ。」
呆れたように、その男性が言う。
「ふ、ふ、ふぇぇぇん!」
ちほ、と呼ばれた子は泣き始めた。
通りすがりの人が、こぞって彼女の方を見る。
「こら、ここで泣くな。」
諭してる姿を見て、いてもたっても居られなくなった。
「あのぉ。それ、チケットですか?」
「……は、はいぃ。無料券を配っていま、す……」
「ぼ、僕に一枚ください!」
▪▪▪
事の成り行きで、始めて『地下アイドル』の劇場に入った。
どうやら、ちほちゃんは劇場の新人アイドルらしい。
僕以外、誰も座って居ないな。
「あ、あの!わ、わた、わたしのライブに……」
ちほちゃんは、かなり緊張している。
「ちほちゃん、落ち着いて。レッスンみたいに、歌って踊ればいいから。」
思わず、客席から言ってしまった。
……まぁ、こんな応援で良いか分からんが。
「は、はい……すぅー……はぁー……はい!わたしのライブに来てくれて、ありがとうございます!一曲ですが、聞いていってください!」
ライブが始まった。
歌も躍りも、まだまだおぼつかない。
でも、何だろう。この気持ち。
プロとはまだまだ言えないけど、応援したくなる気持ち。
「あっ、ありがとう、ございました、」
歌いきった、ちほちゃんがそう言った。
「……僕、決めたよ。ちほちゃんの最初のファンだ!応援させて欲しい!」
「えっ……フ、ファン……ふ、ふぇぇ…ふぇぇぇん!」
嬉しさの余りか、ちほちゃんは舞台の上で泣いてしまった。
この臨場感、良いのかも知れない。
▪▪▪
翌日。登校日。
「よぉ、鳥川くぅぅん。 (重音ボイス)」
この声は、久保の声だ。
「……あ、久保のヤツ!昨日はよくも僕を待たせたな………」
「わりぃわりぃ。父ちゃんがぎっくり腰になっちゃってよぉ。その介抱で来れんかった。」
それなら仕方がないな。
「……で、そのままショップの方に行ったのか?」
昨日の事を話した。
久保は「ほぉ」と言った。
「今度、俺も一緒に行かせてくれよ。」
「おうよ。」
教室の中に入る。
(……あれ?)
一人の女の子、僕の方を見ないのだが……
それに、眼鏡をしているが顔に見覚えがあった。
(……まさか、まさか?)
そうだ、確か一人『レッスン』と称して、放課後直ぐに帰っていたな。
そう、彼女は同級生だった。
―――泣き虫アイドルちゃんと僕。物語は始まったばかりである。
読んで頂き、ありがとうございました。
(次回を含ませた感じに仕上げたので、時間があれば続編も書きたいと思います)