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ウシ、58年のキャリアデザイン(明治14年~昭和14年)博多③

継母のミヨに女の子が産まれてからは、

自分を気にかけてくれてきた祖父も父ゲンシンと同じように何より赤ちゃんを可愛がり、

ウシは診療所を真面目に手伝うマンパワーだけの存在となった。


その赤ちゃんは、

父ゲンシンの信の漢字と生きるという二文字でノブオと名付けられたが本当は跡取りの男の子の名前でもあった。


ミヨは嫁いですぐに妊娠して男の子を産んだがひと月ほどで高熱が出て死んでしまった。


ウシはその頃、

急に頼まれたときなど外科処置に使う血や膿が付いた布巾を触った手で赤ちゃんの子守りをしたことが赤ちゃんの高熱と無関係でないような気もしたが、

誰もが「あの子は弱かったのだ」と皆が口にするだけだった。


実はウシは何年も診療所の手伝いをしてきたことで、

患者の症状と予後について次第に正しく予見できるようになっていた。


そこでは自分に仕事を指示するものは居ないので医者らの治療の様子を見て自由に手伝いに入るのだが、

咳をして血を吐いている患者と腫れた病巣からみどり色の膿が出ている患者には近づかないように働いた。


あきれることに、

何度外科的な処置をしてもすぐに喧嘩をしてまた怪我の処置、というのを繰り返す患者もいる。


薬草を細かく砕いて混ぜるのも骨がおれるし、

その薬草や薬の中には長崎でしか手に入らない高価なものもあり、

父か祖父がわざわざ出向いて購入することも少なくない。


医療を商売と捉えるとなかなか大変で、

大抵の患者は米や芋や大根、魚や海藻などを治療費として父や祖父に渡していたり、

大棚の商家や豪農、裁判所などの公務員らやその家族の治療費は高額にして、

お金、数ヵ月分の米、着物や履き物、白布や作務衣、医療器具などになっていたようだった。


育児のためにひと部屋新しく増築された離れの家は、

ノブオを産んだミヨを中心に回っており、

産まれ育った家で取り残されたようなウシは自分の居心地をもっと良くしなければ、と考えていた。











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