ウシ、58年のキャリアデザイン(明治14年~昭和14年)博多 ①
父のゲンシンが亡くなってしまってから、
57歳になった自分がこれからどうして生きていけばいいのか、
もう導いてくれる人間もウシには居ない。
獣にちなんでウシとかトラとかクマとか、
多産を防ぐためのトメとかステとか、
明治の女の子の名前には可笑しな名前がつけられている。
ウシ、って、
神様とか言われても、
生き物ならツルがぎりぎりではないのか、と、
思っていても意見などできない。
ウシが産まれた年には「憲兵」が設置された。
憲兵制度は、
自由民権運動の牽制や
警視庁の薩摩閥勢力の減殺などのために創設されたようなものでもあり、
国民からは自由な思想や情報がマスキングされていった。
ウシは二度、結婚しているが、
15歳頃に縁談があるのが普通のところかなり晩婚の25歳で嫁いで12年後には子どもが出来なかったので離縁されて実家に戻り、
43歳のときに1年ほど二度目の結婚をしていたが、
だいたいは父の診療所を手伝って生きてきた。
幼い頃は、
10歳で父が結婚するまでは
祖父と父からたいそう甘やかされ
専任の子守りに育てられていた。
思い起こせば12歳このころに継母がノブオを身ごもってから、
人生最初の憂鬱が始まったといえるのかもしれない。