第8話 異世界探索篇⑵「マンションにやってきました。」
「無音移動」
派手に壊された玄関を抜けて、目的の階へ急ぐ。
このマンションには、あいつがいる。
大手巨大スーパー”たらふくえん”から徒歩2分。
この辺り一面を見渡せるマンションで、嫌味な装飾が施されたロビーは、何度か通ったものだ。
玉野祐樹。
小中高と一緒の腐れ縁で、親が小金持ちの、「ミリタリーオタク」。
あいつは家にモデルガンやら、色々持っていて、法スレスレのモノもいくつか持っていた。
今の、、いやもう無職なので、リストラされたか、、いやどうでもいいか、まぁとにかく今の会社にはいってからは、偶にしか会っておらず、リストラされてからは、恥ずかしくて連絡もできていなかった。
が、それでも会えば昨日まで会っていたかのように、なんのわだかまりもなく、話せるし、唯一心を許せるやつ、それが玉野だった。
玉野なら、なにか武器、そう、スキルを活用できるような遠距離武器を持っていそうだし、それに、ここにある部屋は、あいつが親から買ってもらったマンション。
引越しもしていないだろうと思い、階段をかけあがった。
時おり、ゴブリンと思しき声が聞こえたけれど、そのまま無視して駆け上がる。
戦闘はできるだけしない方がいい。
なぜなら普通のRPGのように、戦っても「経験値」を得られないのだ。
なら無理に戦う必要はない。
だけど、、、
上の階の階段の踊り場にゴブリンが数匹いる。
見つかるギリギリのタイミングで
「時よ止まれ、ザ・ロック」
スキルは思う存分使うことにする。
なぜならスキルは使えば使うほどレベルがあがるようなので、どんどん使っていき自分を強化しなければいけない。
そして、この能力の発動の際には、ロック、「錠」って言葉をつけて、発動している。
まんまだとあの悪のカリスマ様に申し訳ないし、それになぜか「時よ止まれ、◉◉◉◉〜」って声に出して言わないと発動しないのだ。
思い込みなのか、そういう仕様なのか分からないが、今はレベルも2にあがって、12秒時を止める事に成功している。
11、10、
カウントが進む中で全力で階段を駆け上がる。
ゴブリンたちの脇を通り抜け、目指す階へ。
そして、遂に目的の階までたどり着き、玉野の部屋の前に急ごうとした瞬間、
「なんだよ、、、、これ。。。。」
おびただしい血痕と、くさった肉の匂い、バラバラになった身体。
それらは、ぶちまけたかのように、廊下に散乱していた。
『恐怖心が一定値を超えました。「全耐性」スキルをレベルアップします』
そして、そこに見知った顔を見つけた。
いや、目があった。。
「玉野、、、、」
ギョロっとした目で、気味が悪いと女子には言われていたが、そんな玉野の目はこっちを見ながら、ポーンと廊下の向こうへ移動していく。
『恐怖心が一定値を超えました。「全耐性」スキルをレベルアップします』
見開かれたママの目で、俺を睨み付けるかのような玉野のその目がついた肉体は、頭しかなかった。
そして、その頭でキャッチボールでもするかのように遊ぶゴブリンたち。
『神への冒涜を確認したので、職業「反逆者」のレベルがアップします。』
『反逆者のレベルアップと同時に、強い願望を確認、、、、、、、、スキル「反逆の芽」の効果により、スキル「闇に堕ちた心(Lv1)」「蝕む者(Lv1)」を獲得』
スキル獲得の声が脳内に虚しく響いていくが、俺の心は、暗く、そしてやりきれない悲しみと、怒りに染まっていった。
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