0話:私は思う
0話はかなり気持ちの悪い表現を使っていますから、読み飛ばしていただいても構いません。
気が向いたら他のキャラの内的世界も表現しようとは思いますが、それは気が向いたらで笑
早めに1話更新できるよう努力します。
0話より遥かに読みやすいはずです!
それでは。
ふぅ…。
空を仰ぎ息を吐く。2月真っ只中の夕暮れにどこかで見たような真っ白な私の息が溶けて消えた。
私は今どこにいるのだろう。ここ一年間、毎日これを考えながら生きてきた。変わろうと決意したあの日から私は前に進めたのだろうか。
少なくとも世界を知らない純粋無垢で完全無欠で全知全能な想像上の神のようだった去年の私は、寒空の中に消えて無くなってしまっただろう。しかしその儚く寂しくもあり、また力強くもある冬の一歩は、私を確実に大人へと近づけているのだと思う。
あの頃、私は確かに"正義の味方"だった。わかりやすく言い換えるなら、子供だった。
手元にあるスマートフォンを見る。示す時刻は16時。18時にこの場所で待ち合わせをしているから少し早く着きすぎたようだ。少しこの見慣れた街を散歩でもしながら物思いに耽るとしよう。
"僕はね、正義の味方になりたかったんだ"
かつて私に呪いをかけたあの言葉を思い出す。まだ小さかったあの頃に目にした正義の味方のあり方。思い描いた通りの正義の味方になれなかった彼は自信の夢を捨て次の世代に託すことにした。
そして、その夢を私が受け継ぐ。
なぜって?彼の生き方が綺麗だと感じたから。
私と同じようにその道を歩むもうとする人もいた。その人は私とは違う世界で、違う形で、闇雲に走り抜けていった。そのうち何人かは私がそうだったように寒空の中へと消えていき、そのうち何人かはまだ正義とやらを追い求めているのだと思う。
今回はそんな私の正義の話。私は表現についてはやたらと凝るが、蛇足は嫌いなタチだ。
スマートフォン、あるいはインターネット。コレはまさに人類が手にした神器と呼ぶに相応しい代物だろうと思う。その名の通り、手にした者を神へと昇華させる。
私が先程から使う"神"とは何か、明らかにしておく。
私のいう"神"とは、全てを手に入れた者のことを言う。いいや、あるいは"全てを手に入れたと思って満たされている者"か。あるいは、そう、これが一番適切な表現かもしれない。
"世界が完結してしまった者"
神々の世界は常に万全で完璧で正義だ。間違った人は許されず、そして神自身は間違えることすら無い。全てが整い、そこで勝ち続ける神々はまさに正義の体現者だ。少なくともその広大でちっぽけな世界の中では。
そして神々は自身の世界を選択することが出来る。神自身を是とする者の存在を許し、非とする者の存在を拒む。完全な選民の先に神々の世界が構築される。
それ故に神々の世界は神々の数だけ存在する。
だが、神の世界はある程度の範囲を共有している。共有している世界が近ければ近いほど神同士は近しい存在へとなりやすい。あるいは、ソレがある距離より遠いならば絶対にわかり合うことはできない。
こうして神同士の間に争いが起こる。この争いは苛烈で時には現実にも影響を及ぼすが、しかしそのほとんどは水面下で起こる。
そして絶対にそれらの争いには和解は存在しない。
つまりは、神々の世界においては神一柱一柱が正義の味方ということだ。彼らは自身の正義をぶつけ、今も戦っている。
だからこの世界には、正しくて正しくないモノが詰め込まれていることになる。それ一つ一つは確かに答えなのだ、ただ全ての神が共有することは出来ないというだけであって。
これが今の私の名もない答え。
神であり正義の味方だった昔の私が一年をかけて、導いたちっぽけでチンケで小さな名のない答え。
誰かに振るう事が出来るほど強くはない。誰かを救うほど優しくもない。しかし、誰かを傷つけるほど傲慢でもない。
私はただそこにある神たちを受け入れていこうと思う。そのためなら私は神を辞めよう。小さな私では正義の味方にはなれない。
"答えは得た"
そろそろ時間だ、約束の場所へ戻るとしよう。
すっかり日が暮れて暗くなった空には明るく輝く無数の星、それに共鳴するように輝く神たちが今日も地上で笑っていた。
ここまで付き合ってくれたみんなには、一つ問いたい。君の正義はなんだ?
そして、次からは私の無様なこれからをお披露目することになるからその辺りはご容赦願いたい。なぜなら私は神を辞めてしまったから。絶対的な正しさを自ら捨ててしまったから。
私の生き様を見ていて欲しい。
そしていつか、さらに研ぎ澄ました私の答えをお伝えしたい。それが私の新たな夢だ。
神も人もいつかわかり合える日が来ると私は思っている。だから私はこれからを奮闘しようと思う。
それでは、また。