7話 サクヤ町に移る
記憶が少し戻ったもの、召喚者の接触が無いまま、3年経って俺は8歳になった。
ユキとダンガは自分の子供として、引き続き面倒を見ていこうと思っていたが。
そんなある日、予定通り魔法学園から入園の誘いがきた。
それには、衣食住は学園側で持つので、是非入園してほしい旨が書かれていた。
なんと、破格のお誘いである。断る理由もない。
俺は、夕食の後、皆に話しかけた。
「このまま、この家に居させていただきたいのですが。折角の魔法学園からのお誘いもあるので、町に移ってもいいでしょうか?。町に行けば人の往来も多いので、もしかしたら手掛かりが見つかるかもしれません。」
「ついに来たね。おまえはうちの子や。町に行っといで。もちろん、もろ手をあげて応援するよ」とユキ。
「向こう様が是非にというのだから、この以上のいい話なんてないよ いっといで!」とグンヤ婆。
「やだ! ここにいても手掛かりは見つかるわよ! いや! 」
アヤが強固に反対したのだが、広く手掛かりを得るには町が良いだろうということで納得した。
トチノキ村からフロンティアの町までは、馬車で5日ほどかかる。ダンガやユキも一緒に行って、何かと面倒を見たいところだが、遠すぎる。村長が紹介状を書いて、それを同伴してもらえる商人に持たせた。
出立の日、ユキの後ろではアヤが泣き通しだった。
「ここは、僕の家だと思っています。アヤ! 手紙を書くからね。」
アヤは下を向いたまま、ユキの後ろから出てこようとしなかった。
5日間の旅は、特に危険なことも無く過ぎて行った。
これからの生活や将来自分は何になりたいのか? ちょっと不安である。
魔法学園に着いた。受付嬢に話をすると、奥から学園長のユーリィが駆けてきた。
「あ・・ やっと来た。 うれしいなあ 」と俺に抱きつく。
一緒に駆けてきた女性を指して、
「この子は、バニラ。君の身の回りの世話を頼んでいる。 あ・・自分でできるのね。 でもここでは、彼女にも仕事を与えてね。そうでないとバニラが泣くから。」
「バニラです。アライ様、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、サクヤ・アライです。 サクヤと呼んでください。」
長い廊下を歩いて、宿舎に向かった。
通称、”ボガの家”と呼ばれて、魔法学園に隣接している。
宿舎は一階が食堂や集会場、2階が男の子、3階が女の子になっている。
魔法学園には男の子が50人と女の子が45人在籍しているとのこと。
そのうち、男の子が20人と女の子が25人が宿舎暮らし。
8歳から12歳まで、5段階あって。1クラス男女で20人ぐらいになる。
バニラは、鷹の絵に3本の矢が描かれた部屋の前で止まった。
「ここが、サクヤ様のお部屋になります。」
俺を先に入れて、後からバニラが入ってきた。
二部屋あって、ドアを入るとソファーと4人が座れるテーブルとイスがあって、奥の部屋にはベッドと小さな机が一つあった。2部屋とも南向きでうれしい。作り付けの衣装棚などがあって、最小限生活に困らないようになっている。まあ必要なものは買い足せば良いか。
「トイレと洗面所、給湯室は廊下の東と西の端にあります。 洗濯物は私に渡していただければ、洗って翌日お渡しできます。」とバニラ。
「それから、わたしに用がございましたら、この呼び鈴を押してください。飛んできます。」
そう、バニラは鳥人種なのだ。
俺は荷物を運び入れて、一段落した。もうすぐ昼なので、食堂に行ってみよう。
しばらくして、バニラがやってきた。俺を食堂に案内して、自分もトレイを持って、給仕カウンターに並ぶ。
「おや、バニラ。新しい人だね。 たくさんお食べ。 」と給仕のおばさん。
午後は、荷物をほどいて、ゆっくりした。明日は町に出て、必要なものを買い集めよう。