6話 サクヤ町に行く
6歳の夏、俺とダンガとアヤの3人は町にいた。
目的は、俺の魔法能力の確認だが、一行は、先に冒険者ギルドにやってきた。ダンガはここのマスターと知り合いであり、魔法学園の伝手になってもらおうと相談にきたのだ。
「こんにちは。 マスターはいるかな? 」とダンガが受付嬢に話しかけた。
「はあ。誰に会いたいんだって! おまえだれだよ!」と。
まあ、可愛い顔してとんでもない言葉遣いだ。
「ダンガが来たと言ってくれ。 」
「ちょっと待ちな!」と受付嬢は、後ろのドアから出て行った。
と、ほどなくダンガに劣らず筋肉隆々の男が、ドアからでてきた。
「おう。ダンガじゃないか。久ぶりだな。 お! アヤも大きくなったな。」
「ゴンゾウのおっさんも相変わらすね。」って、アヤが挨拶を返す。
「で、何のようだ? 」
俺を紹介して、サクヤの魔法能力を知りたいので、魔法学園への紹介状を書いてくれないかと、相談した。
「ほう。全属性持ちか。珍しいな。で、お前、いつのまに息子を作ったんだ?」
「うん。まあな。」
ダンガは経緯をゴンゾウに話した。
ダンガ一行は、紹介状を持って魔法学園にやってきた。
受付に紹介状を見せると、検査員が呼ばれて早速検査室に通された。
「検査員のキースです。 測定するのはこちらの少年ですか?」
「はい。よろしくお願いします。」と俺。
部屋に入ると正面に、大きなパネルがあって、きっとこの星の地図が描かれており、その周りに50cm*30cmの黒い艶のあるパネルが10個ほどあった。
その下に机があって、手のひらの模様が書いてある。
「そこの、手形のところに手を置いてくれますか?」とキースが指示を出す。
俺は、手を置いた。キースがスイッチを押すと、正面のパネルが色々な模様を出して、やがて止まった。
キースは、パネルを見ながら、
「うーん。確かに全属性の魔法力がありますね。 それにレベルもこの年にしては、優秀です。」
ということで、帰ろうとすると。
「ちょっと、待ってくれますか?」と受付嬢が止めた。
一方、魔法学園に入ってゆく一行を見ていたものがいた。一人の少女が、馬車から覗いていた。
「みつけたわ。 きっとあれは・・・・」とフローラは確信した。
応接室に連れて行かれ、しばらく座っていると、綺麗な女性が入ってきた。
耳が長い。エルフだ。俺もアヤも初めて見たので、不躾なように固まっている。
「これ、そのように見つめるものではないぞ!」とエルフのお姉さんに叱られた。
「私は、この学園の長をしている ユーリィという。 サクヤ・アライ君だね。 8歳になったら、この学園に入園してくれないか? 歓迎するよ。」
「ありがとうございます。その時が来たら考えます。」と、アヤ。
なんでアヤが返事しているのだ。
「おやおや、お姉さん気取りだね。 はははは・・・」
「いやあ・・。まことに申し訳ありません。 こらアヤ!」とダンガ。
となごやかにお茶とお菓子で、話が進み、やっと魔法学園を後にした。
ダンガたちは村に帰って、魔法学園での出来事を話し合った。そして、8歳になったら、町の魔法学園に入園する予定になった。もちろん、出自の手掛かりを掴むためにも、町の方が良いとの話はそのままにして。記憶が少し戻ったことは内緒にしておく。
一方、フローラは、時々トチノキ村の俺の様子を見に来ていたようだ。
そして、魔法学園のユーリィに、入園後の俺の件は金銭的にもフローラが見るということで話がまとまった。
この世界に馴染んでもらうためにも、今の環境は申し分ない。
2年は長いようで短い。事をせいては事を仕損じる。とフローラはつぶやいた。
俺は、前の記憶はあるものの、5歳の身体と行動力では、大層なことができるわけではない。
日々を、魔法の訓練と、このゴムまりのような身体を満喫していた。