40話 一個師団がやってきた。
「うわーー。 これはちょっとしんどいなあ。」ってアイリス。語調が変わっているよ。
ここは、ミズホ王国の最北西のカエデ町にある神殿前。
神殿の南側に、戦車が5台、ヘリコプターが2台、装甲車が20台。兵が8000人ほどいるようだ。
一個師団の規模だな。どこへ行くつもりだったのか、ここが目的地でないことは確かだ。
兵糧隊や救護隊も抱えている。
「ハナさん、とりあえず、物理防御結界を張ってもらえるかな。」と俺。
「結界の外には出られなくして、様子を見よう。」
「うん。それが良い。 軍隊などの脳筋の奴らは、ちょっと弱らせないと聞く耳を持たんよ。」とシン王子。
神殿の北へ幅10Kmと奥へ50Kmに設定した。
都合よく、サクヤ王国と隣接しており、多くはサクヤ王国の中である。
彼らは、動くことが可能な範囲で調べるだろう。
結界の中には、神殿はもちろんのこと、山あり谷あり川ありと草原である。
また、狩猟できる小動物、採取できる木の実や果物もある。
まあ、兵糧と合わせて、どのくらい持つかな?
「今は元気だから、少し弱ってきたら、話を聞く気にもなるだろうね。」
8000人が、どのようにサバイバルをやってゆくのか見ものだね。タイミングを見て接触しようか。
ミズホ王国の最北西にあるカエデ町は、人口5000人ぐらいの小さな町である。町の北側2Kmには山が迫っており、神殿は町と山の中間に建っている。町の北側には高さ2Mの土塁とその先には塹壕がところどころ掘られている。これは、ゲートからの直接の侵入を妨げるためのもので、他のゲートにも同様の物が作られた。
今、ここに8000人のレベル5の軍隊がやってきた。
全員を整列させると、指示を出しているようだ。翻訳機を向けて、内容を聞き出す。
周囲を調査する部隊、テントなど居住の設営部隊、兵糧の確認と調達可能な食料などの調査隊を指示して行動に移らせたようだ。
まあ、様子を見ようということで、2か月が経った。
その間、ヘリコプタや装甲車などで方々調査に向かったみたいだ。まあ、結界の外には出られないので、放置していた。
動きも緩慢になり、座り込む兵士もちらほら散見できるようになった。
「うーん。もうちょいかな。食料の底が見えだしたら声をかけようか?」
3か月が経って、炊事場からの煙も少なくなってきた。
内紛や大きな動きもなく、3か月は、よくもったと思う。
俺たちは、いつもの通り、土塁の前にテーブルと椅子を用意した。
そして、サクヤ、ドラコ。ハナ、コロネ、シン王子の5人が座った。
小さなコロネは、俺の肩に座っている。
ゆっくりと時間が過ぎてゆく。待つこと、1時間。
偵察用と思われる装甲車が1台、こちらに向かってきた。
「そこで、止まりなさい。 」とドラコが拡声器で言い放った。
「我々は、ローズ国の軍隊である。情報の提供を求む!」と偉そうにほざいてきた。
「了解した。あなたがたのトップをこちらに向かわせなさい。 」と返答した。
装甲車は、何も言わず戻っていった。
3時間経った。やっと動きが出てきた。
おお・・。来た来た。
ヘリコプタや戦車が、一斉にこちらに向かって進行してきた。
その中から、男性一人が少女を伴って、こちらへゆっくりと歩いてくる。
「うーん。なかなか慎重だね。 何かあれば、後ろの兵力で対応するということだろうか?。」とシン王子。
「そうだね。だとすると、こちらに来るのはNo2ということかも?」とドラコちゃん。
「慎重だね。塹壕とか土塁とか見たら、自分たちよりずっと戦力は劣るとみているはずだが。」と俺
「そもそも、ここは自分の星の延長にある”どこか”と思っているかも?」
さて、やってきたよ。精悍な軍服をまとって、小太りの男が小さな少女を伴って。
少女を伴っているのは、非戦闘の証だろう。
「さあ、どうぞ。 座ってくださいね。」とハナが、用意したテーブルに案内した。
「ありがとうございます。 私は、マレイ・カカグと申します。 」と挨拶してきた。
そして、小さな少女は「カンナ・カカグ と申します。」と小さな声で言った。
(可愛い・・。ハナの目が点になっている。)
とりあえず、戦闘の意思はないと見ていいかな。
ハナが、お茶とお菓子を用意した。
「さて、私はこの星のゲート管理しているサクヤと言います。」
「左から、ハナとドラコ。右にコロネとシンです。」
「なぜに、こんな子供たちと話しているのだろうか? って疑問に思われていますか? 」と俺。
「いや。幾分そのような思いもありますが、食料も底をつき、藁をも掴む思いで参りました。なにとぞ、ご支援いただける方に、お目通りをお願いします。」
ほう、なかなか低姿勢だね。やはり3か月はきつかったかな?。
「私があなた方の世話を統括するものです。 よしなに。
そして、私どもが、衣食住の支援をします。遠慮なくいってください。」と俺。
「ありがとうございます。 」
「早速、炊き出しの用意をしますので、手伝いを100人ほど来させてください。」
「妊婦や幼い子供はいますか? 優先してお世話をしますのでこちらに来させてください。」とハナ。
「調査します。 」
「この星について、そしてあなたが通過してきたゲートについてお話します。」とハナ。
この惑星は直径30000Kmほど。赤道を中心に東西に8000Km、南北に2000Kmと広大な陸地と、直径1000Kmほどの大陸がひとつある。残りは青い海。
幾つかの2足歩行のひと種と村や町が点在しており、人口はおよそ500万人ぐらい。
文明はレベル3、文化のレベル3であり、剣と弓が武器、村や町があって王政が敷かれている。
「わかりました。目に見えない壁があるようでしたが、あれはあなた方の備えなのでしょうか?」
「そうだ。物理防御結界という魔法だ。 あなた方には、まだ幾分戦闘力が残っているようだが、我々の力を甘く見ない方が良い。」と、シン王子が睨みを利かす。
「いえ、滅相もありません。 全く戦闘の意思はありません。 即刻武装解除します。」
手伝いが120人、魔女の遊撃隊・スバル班の20名、ビーナス班20名の160人が集まった。
「せいれーつっ!」シン王子が号令をかけた。
こういう時のシン王子って精悍で凛々しいよね。
「調理班が3人で10組、資材班2人で5組、給仕班が2人で50組に分かれる。ピンクの服の子の指示に従ってください。」とドラコ。
いやー。8000人分の炊き出しなんて、一応準備はしていたけど、大変だ。
野菜とたっぷり肉入りスープ、とパン。入れ物は自分が使っているものを持参してもらった。
「ありがとうございます。 久々にお腹が膨れました。」
「おいしかった。」
と、感謝の言葉が聞こえた。
一人一人の心は綺麗だ、ドラコは思った。
「さて、落ち着いたところで、今後のことについて話をしましょうか? 」と俺。
「炊き出しは、1か月ぐらい続けます。このまま、結界内で開拓する案と、さらに北へ行ったところに町がありますので、そこへ移住する案があります。」
「7日後に、視察に行きましょう。 決定権のある人も含めて10人ほど用意してください。」
「くれぐれも、あなた方に拒否権はありません。 念のためこちらの火力をお見せしておきましょう。」
「ドラコちゃん。一発火炎ブレス 打ってやって。」と俺。
ドラコが竜形態に変身して、火炎ブレスを吐いた。土煙と熱風が舞い上がった。
指揮官も、8000人の転移者は唖然とその様子を見ていた。
脅す必要はあったのかって?。全体の3割ぐらいが急進派のようで、闇の精霊が漂っていたので牽制した。
あ・そうだ。彼らはウサギが進化した形態で、長い耳が可愛い。
ピンクのキュロットにピンクのふぁわふぁわブラウス、黄色の半長靴。白い毛玉の尻尾。
「あのー。 カンナちゃんをこちらに・・・」と、ハナが手をワキワキとしている。
あまりの可愛さに、ハナが正気を失いつつある。
「あのな。 誰が娘を人質に出すかあ!!」と父親のマレイ・カカグが叫んだ。
その後、8000人のウサギ族は、サクヤ王国に移り住んで落ちついたとのこと。




