3話 サクヤの日常
「サクヤー いくよー。」とアヤが声を掛ける。
今日は、2人で薬草の採取にゆく。弁当を持って、ユーラス河の川べりを上流に向かう。
良く晴れた青い空と、清々しい風を背に、2人は軽やかに道をゆく。
そう、薬草は、普通に道端や草原、森の中で薬草が手に入る。薬草は洗浄、乾燥して束にする。
「アヤ姉 あの空に輝いている太陽は、どうして3つもあるの?」。
「しろさん、きいろさん、あおさんと呼ばれているよ。”しろさん”は光、”きいろさん”は魔素、そして”あおさん”は精霊の光をこの地に届けているの。そして、三つ巴になって回っているわ。」とアヤ。
「そうなんだ・・・。」
俺は何となく、太陽は一つと認識していた。どこで?いつ? 記憶がおぼろげだ。
この星には、3つの太陽が巴に回っている。一つは光の白い太陽、2つ目は魔素を放つ黄色い太陽、3つ目は精霊の青い太陽がある。魔素は物体の相互結びつきが、さらに深いところで影響している。たとえば石は強い物理力で砂が固まってできているが、それより強い結びつきが魔素だ。例えば、丸い石を四角に変えるのも魔素を四角に構成しなおすことで実現できる。その魔素を自由に操るのが魔法だ。そして魔素は、この星の理の基礎となっており、この星に住む生き物は、全てその魔素の影響を受けている。すなわち、この星の生き物は魔法が使える。
この話は奥が深くて、もちろんアヤもダンガも詳しくは知らない。
ユーラス河に沿って、踏み固められた道が川下と川上の左右に分かれている。二人は左に曲がって上流に向かう。
3つの太陽が真南に来るころ、二人の篭の中は薬草で一杯になった。
お腹もすいたし、そろそろ昼ごはんにしたいところだ。周りを見ると都合よく大きな木があって、一休みできそうだ。
「お腹すいたよー。はやくご飯にしようよー」とアヤが俺に駄々をこねだした。
敷物を敷いて、二人はもそもそと食べだす。
大きなおにぎりと、干し肉、そしてリンゴがデザート。なんて気取ったものじゃない。
どこまでも青い空。俺は、なぜか胸に滲み出てきたメローディーを口ずさんだ。
「えー、サクヤは歌が歌えるの? 歌は妖精が上手なんだよ。」
「えっ! 妖精がいるの?」
「うーーん。 でも見たことはないの。 きっと、おとぎばなしかな?。」
続いて、俺は傍にあった草の葉を手に取ると、そっと音を出してみた。
同じメロディがつづられる。
「あ・・・それいいな。 教えて。 」とアヤ。
持ち帰った薬草を洗って干す。前に干したものを取り入れて、長いものは5センチぐらいに切る。
大きな麻袋が一杯になったら、定期的に来る商人に買ってもらう。大銅貨が2枚になる。
大きな麻袋が一杯になるには、10日ほどかかる。楽にお金は手に入らない。
(大銅貨1枚が1000円ぐらい。 10日で2000円ほどの稼ぎになる。)
そして、家に帰ってからアヤは、ユキやダンガ、グンヤばあさんに、今日の出来事を話した。
「ねえねえ。サクヤってね。計算もできるし、歌も歌えるし、葉っぱできれいな音が出せるんだよ!」
「やはりねえ。貴族様の子なんだね。?」とユキ。