36話 ハナは、なぜここにいるの?
私は、12歳の夏に重い病気にかかった。不治の病だと知ったのは、もっと後だが。
私の家は、郊外にある大きな館で、およそ200M四方の敷地に立っていた。子供のころは当たり前だったが、小学5年生ぐらいになると、やはり回りと異なり、裕福な家であることを知った。
ドクターが2日おきにやってきて、具合を見て薬を持ってきた。しかし、どんどん衰弱してしてゆき12歳の冬には、庭を散歩することもできなくなった。
年明けて13歳の春、ドクターが代った。神崎元という優しそうだが、沢山悲しみを抱えているようにも見える30歳ぐらいの人だった。
「ハナちゃん、庭を散歩しようか? 」
ドクターは、車いすの私を時々散歩に連れ出してくれた。
「ハナちゃん、異世界ものの漫画や小説に興味はあるかな? 」
確かに、異世界ものは読んでて楽しい。新しい視点や生活に魅力を感じる。
ああ、あんなところに行けたら、思い切り走られるし、おいしいものも食べられる。沢山友達を作って、ワイワイやりたい。恋もできて、こどもに囲まれることもありかも!
しばらくして、ドクターが、バーチャルオンラインロールプレインゲーム(VRMMO)を持ってきた。
「ハナちゃん、これを付けてみて。」と、ドクターがヘルメットのようなものを私に被せた。
「スイッチを入れるからね。 ちょっと違う世界が見えると思うけど、怖くないからね。」と言って、
スイッチが入れられた。耳にブーーンと小さな音がした。
そして、一瞬、頭の中が真っ白になって、気がつくと草原に立っていた。
どこまでも続く緑の草原と森、そしてそよ風、青い空と白い雲。
はっと横を見ると、15歳ぐらいの少年が座っていた。
私は、というと、白いワンピースに赤い靴。2本の足で立っている。
「あなたは誰? ここはどこ? 」
二人で少し歩くと、村に着いた。
通りすぎる皆が、少年を見て
「ジンさまー。 こんにちは。」と挨拶をしてゆく。
草原の中を自分の足であることができ、楽しかった。この1年、ベットに寝たきりで、歩いたり走ったりできなかったのに、ここでは飛び跳ねることができた。
「ぼくはね。 この星を作ったんだ。」と少年 ジンが言った。
「この村も、ここから2日ぐらいにある町や、その先の王都も。文明は、ほぼ、鎌倉時代かヨーロッパの中世をイメージして作った。もちろん鉄砲や爆弾はまだ、出現していない。」
「ここはね、異世界もののゲームやラノベを参考にしていて、僕が楽しむためのものなんだ。でも、きみにプレゼントするよ。第2の人生を楽しむためにね。」
ここの地形や植物、動物などは、地球を参考に創った。多くの人種については、他の世界から人格だけをコピーしてきて、こちらで作った身体に写しこんで増やしたとのこと。
私は13歳の秋にドクターと結婚し、機能を停止したそうだ。
というのも、私の身体は死んだわけでなく、未来の医療に託す処理がされて、仮眠保管されたとのこと。
ドクターは、その後私の細胞を元に子供を得ることに成功した。その一人が、アイリスである。
神崎歴200年頃までは、ジンと共に魔女の星の作りこみに精を出した。
魔女の星と地球の時間の進行は比例していない。神崎歴200年は、地球での6か月ぐらいに相当する。
そして、私は、機能停止の間際に、神崎歴1500年頃に設定して目を閉じた。実際には、1474年の魔女の星に降り立ったのである。そして、152年が経った。(1626年)
アイリスが父から聞いた話をまとめると、左様である。
では、アイリスがなぜここに居るのかって? それはお母さんの傍が良いからだよ。




