26話 ドラコ 町で暮らす
「転入生を、紹介するよ。 みんなよく聞いて。」とユーリィがドラコに合図をする。
「ドラコです。 フローラの妹です。 」
「えーっ! 」と教室内が騒がしい。
もう、3か月ほどで卒業なのに、いまさら転校生って??
勇者の従者であることは伏せてあるが、仲間ということで公表している。
俺の部屋には、フローラとドラコがいる。
2人とも、おいしそうにイチゴショートを食べている。
ボガの家の左へ3件目にケーキ屋があって、寮の子どもたちは、よくそこのお菓子を利用している。
「ね。サクヤ、卒業したら、そのあとどうするの。 勇者稼業だけじゃ暇で貧乏になるわよ。 勇者手当はあるけど、潤沢では無いからね、 それに、ドラコちゃんも養わないといけないのよ。」
「えっ。 それって勇者だけでは食っていけないってこと?」
「あったりまえのこんこんちきだよ!」ってドラコ。
「おまえがいうなよ!」って俺はドラコにデコパッチンをした。
「あぅ・」
「とりあえず、冒険者ギルドで冒険者登録をする。 そして生活費を稼ぐ。 その間に勇者クエストをこなして、ボーナスを得る。 うん、これで楽勝だ。」と俺。
「で、1年後は、どこか畑を買って、農業をやる。 スローライフで満喫。」
「どこのご隠居さんだよ。 もっとこう若さが無いかなあ・ たとえば旅をしながらハーレムを作るとか。 異世界もの定番をやろうよ! フフフ・・ 私も勇者の妻になれるの。」とドラコ。
勇者の従者、ドラコは今日も俺と一緒に町で買い物をしていた。
「ドラコちゃーん。今日は良い魚が入っているよーー。」と魚屋のおじさん。
「ドラコちゃーん。真っ赤なトマト 取立だよーー。」と八百屋のおばさん。
ドラコは、市場の人気者だ。
従者として勇者と寝起きを共にしたいとドラコのたっての願いに押されて、俺と近くの小さな家に引っ越した。一緒に食べて、寝起きしていると、まさに夫婦のようである。(ふふふ・・・・ドラコの勝ち)
でも、ドラコの料理は目が当てられないし、その他の家事も適当で使い物にならない。で、バニラが常駐することになった。
うん? なぜ、料理ができないドラコが、市場の人たちに人気があるのだ??
ああ、バニラから使い走りに利用されているのか。可愛いしね。 納得!。
小さな家には、いつもフローラやダニス、ジジ、アヤ達が出入りしている。
今晩もジジがお泊りになっている。
(ふたりきりになれないよ・・・)とドラコがつぶやく。
そう、ドラコには仕事を与えている。
町の外に農園を借りていて、そこで野菜などを育てている。広さは、100M四方で結構広い。
我々の食事用を除いて、ほとんどがサクヤ印の農産物として市場に出荷されている。貴重な現金収入である。
「せいれーつ!」朝一番、ドラコが声を放つ。
小屋から作業員が出てくる。作業員はアイリスから派遣されているホムンクルスたちである。身長は120cmぐらいで小柄。緑色のつなぎを着て、赤い帽子は女の子、青い帽子は男の子である。
A班からE班まで、3人一組で15人が勢ぞろいした。
ドラコがそれぞれに、仕事の指図をした。
今日は、トマトの収穫と追肥。そして、草取りである。
「ドラオはどうしているかなあ・・」とドラコは青い空を仰ぎながらつぶやいた。
俺も午後からは農園に顔を出すようにしている。
真っ赤なトマトが収穫箱に積まれている。一つとって齧ると、甘酸っぱくて太陽の香りがした。
俺の魔力や、アイリスの錬金術を駆使すると、もっと収穫やおいしさアップになるが、それは”ずる”なのでやらない。市場荒らしはダメ。
来年は、山裾に果樹園を開いて、リンゴやなし、みかんなどを植えてみようかな。そしてぶどうも。
発酵させて酒造りも面白いと思う。
ホムンクルスたちは、形は子供のようだが、精神年齢は15歳程度に設定されており、可愛い。
俺が歩くと、いろいろと作物や土の状態などを熱心に話して来る。そして、若干のドラコの所業も。
「ちょっとドラコちゃん。こっちへおいで!」
「う・・ サクヤ良からぬことを考えているな。 まだ心の準備が・・・」顔を真っ赤にしてドラコがつぶやいた。
「そうじゃない。今日、柵の中に入ってきた牛たちを脅かしただろう。 苦情が来たよ。」
「入っちゃいかん! って前から注意していたんだけど、また入ってきたから、脅かした。」
「ドラゴンになって脅したらダメだよ。 農家の人から、乳が出なくなったって苦情がきたよ。」
「明日、菓子箱をもって誤っておいで。 それから、柵を丈夫にして、追い払うのはこの子にさせよう。」
アイリスから、犬型のホムンクルスを譲り受けた。
「承知しました。 勇者サクヤ様!!」
「名前を付けてあげる。 お前は、リン、次お前はサン、そしてお前はブチ。 よし行こう。」とドラコと3匹が駆けていった。




