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王都から派遣された騎士達

「ここがアリシア……」



 目の前の草原は若草色の綺麗な色をしていて、風がそよぐ度にさわさわと揺れるその様は陸地の海を彷彿とさせる。

 地球じゃ絶対にみられそうに無い景色だな。



「少し歩いてみよう」



 周りにはちょっとした丘や背の高い樹がちらほらと立っている。

 基本的にはひらけた場所で、アルテュールが言っていた魔物は姿すら見えない。


 っと。魔物で思い出した。

 所持品を確認しておかないと。


 何も意識せずに歩いたが、僕の右手には金貨の入った麻袋が握られており、ポーチのようなものを肩から斜めにかけている。


 着ている防具は紺碧に輝く綺麗な西洋風の鎧で兜は無い。左の腰辺りには剣が携えてある。

 見た感じこれは日本刀だな。


 ポーチの中を覗いてみると、短剣と干し肉が入っていた。それ以外には何も無い。

 何故水上無いのだと不思議に思ったが、よく考えたら魔法を使えば水はいくらでも調達出来る。

 特に慌てる必要はないか。


 所持品はどうやらこれだけのようだが、金貨が千枚ある以上どこかの街にでも行けば何の不自由もないだろう。

 ただ、その街までどうやって行けばいいのかが分からない。地図は無いし土地感覚も当然無い。基本的な知識は備えると言っていたけど自分の現在地が分からないのではそこまで迷わずに行く手段が無い。

 どうしたものか。


 あ。アルテュールに聞けばいいのか。

 何か心の中で念じれば会話が出来るとか言ってたもんな。


 おーい。アルテュール。



『あら。早速神託をして下さったんですね。して何の用でしょうか?』


(これから街に行こうと思うんだけどさ、ここからどうやって行けばいいのかなって。街の名前や城があるのは知識として確かに備わってるんだけどさ、そこまで行こうにも自分の位置が分からないんじゃ行きようが無いから道案内をして欲しいんだ)


『あぁそんな事でしたか。それなら心配ご無用ですよ。この近くにはアリシアの中心となる王都があるのですが、そこの祈祷師に異世界からの訪問者が現れると神託を下しておいたのでそのままこの草原に居れば自然と迎えが来ますよ』



 なんと。そんな所までケアしてくれてたのか。

 助かるな。



(それは凄い助かる。ありがとう!)


『いえいえ。これも神の務めですから。それでは』



 アルテュールとの会話を終え、しばらく草原をウロウロしていると遠目に馬車と甲冑を着て馬に乗っている騎士らしき人がこっちに来ているのが見えた。

 多分あれがアルテュールが言っていた迎えなのだろう。



「おーい!」



 何も無い場所だからすぐに気づいてくれると思うけど取りあえず呼びかけておこう。


 少しずつ近づいてくる騎士達。

 甲冑は白銀に輝き綺麗な装飾が施されていて、馬にも同じようなものが着せられている。

 余程良い品なのだろう。素人目でも素晴らしいものだと分かる。

 馬車の装飾がえらく見すぼらしいのが何となく気になるけど。


 そうして俺の前まで来た騎士達は歓迎するような眼差し……?

 ん?なんだか酷く表情が険しいような。



「おぉっ!?」


「貴様がアルテュール様の神託にあった盗っ人だな!」



 は?盗っ人?



「何の事でしょうか?」


「とぼけるな!その紺碧色に輝く鎧はまさしく世界を救った勇者、イデア様のもの!昨晩国を騒がせた鎧の消失事件の犯人がまさかこんな所でモタモタとしているとはな」



 待って事態が読み込めない。



「だが……貴様が上手く逃げおおせようが捕まろうが結局大した問題では無い。その鎧はイデア様の血を引く者のみが真に扱える崇高なもの。貴様のような下衆な盗っ人が着た所で何の効果も無いのだからな。いずれそれに気づいて鎧をどこかに捨てるか世界中に散らばった捜索員に捕らえらるのが関の山だ。それを盗み出した時点で貴様の運命は決まっていたのだ」


「ちょ、ちょっ!ちょっと待った!この鎧がどれだけ大事なものなのかは俺には分からないがこれは女神のアルテュールに……」


「えぇい問答無用!ひっ捕らえろ!」



 クソ!何だって言うんだよ!

 とりあえず戦って斬り伏せて話を聞いてもらうしかない!



「ほぅ……一丁前に見事な剣を持っているようだな。見た事の無い形状をしているが、それだけだ。いくら剣が見事であろうと私の部下には勝てまい。やれ!」


「クソッたれが!」


「おぉぉぉぉぉ!」


「せいっ!やぁっ!」



 2人の騎士からの攻撃をギリギリの所でかわし、刀を構え直して向き直る。

 大丈夫。いける筈だ。

 動作は頭と体に染み付いている。

 これが転生特典の効果なのだろう。


 日本刀なんて生まれてこのかた握った事すら無いが、どう動いてどう切ればいいのかが手に取るよう分かる。



「あんたらに恨みは無いが……我慢してくれよ!」


「なっ!?」


「おぉ!?」



 自分達の方に向き直り、突撃してきた俺に驚いたのか2人の騎士は何も出来ないまま俺に体の正面を斬られた。

 そのまま地面に倒れ、赤い血が甲冑から漏れ出てくる。



「甲冑ごと斬り裂いたか……それも2人同時に」



 恐ろしい切れ味だなこの刀。

 でも、これなら負ける気がしない。



「だがまぁ……そんな傷程度でやられる私の部下でも無いのだが」


「なっ……!」



 倒れた筈な騎士は俺に飛びかかり、後ろから羽交い締めをするように動きを止めてくる。



「……よし。前につき飛ばせ」


「ぐっ……!」



 解放した?一体何の為……!!?



雷の槍(サンダーランス)


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!?」



 雷の……魔法!?



「ふん。剣の腕前は良いみたいだが、魔法に関してはど素人のようだな。この程度の魔法も防げないとは。よし。拘束して馬車へ積み込め。連れて帰るぞ」


「待……て……」



 駄目だ。意識が保てない……




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