売国のつぼみ
そこは寺井豪と名乗る帰化人がお気に入りにしている海外ブランドの高級ホテルの一室だった。
いつもどおり、シャンデリアの灯りが照らし出す中、中世欧風貴族の館に似合いそうなソファに寺井が腰かけていた。
もう何度も、コードネーム フーバーと言う男と会ってはいたが、未だ寺井はその顔をフーバーの前に晒してはおらず、今もドア越しの会話だった
「フーバー君、確かに君の筋書き通り、この国の超人たちはいなくなりそうだった。
だが、肝心の大統領は暗殺され、超人の力を手放す事は難しそうなのではないのかね?」
「確かに、予想外の事態だったのは認めなければなりません。
多くの民が平和と人権を愛するが故、遺伝子改変などと言う技術を戦力にしようと言う考えには否定的な事には変わりありませんが、一部には野望を抱く者が存在するのも事実。
そう言った力に魅せられた者たちが、力に憑りつかれるのもよくある話」
「で、その力に憑りつかれた者たちをどうする気かね?」
「すでに動きは始まっています。
力は力によって、滅ぼされると言うのを知らしめてあげますよ」
「おや?
君らしからぬ発言じゃないか?
力が力によって滅ぼされるとは、力を得てスーパーパワーとなった我が祖国も、力によって滅ぼされると?」
「そのような事はありませんよ。
一番大きな力、皇帝陛下の力の前には、全てがひれ伏す事は否定しません」
「そうかね?
しかし、あれだね。
超人の技術をうまく運用していけば、我が国を脅かせると言うのに、自らそれを手放すとは、さすが自分たちが武力行使しなければ、平和は保てると信じている国の民の善良さは素晴らしいね」
「善良も行き過ぎれば、ただの馬鹿なんですよ」
「では、君はそんな馬鹿な民の国の王になって、何を目指すのかね?」
「ははは。それは私の理想の国を造る。それだけですよ」
「君の理想に興味はあるが、まあ、今はいい。
超人たちをさっさと処分してくれたまえ。
それと、鋼鬼以上の遺伝子の情報を極力入手してくれたまえ」
「分かりました。
では」
ドアの向こうで見えない相手の寺井にもいつも通りフーバーは一礼して、部屋を後にした。




