河原 真
夕日で赤く染まった窓ガラスを背に、桐谷が立派な机に頬杖をつきながら、その前に立っている男の話を聞いていた。
「入ってきた情報では、原田が倒れた一人の超人を前に立っている画像が治安維持特殊部隊のリーダー柏木のところに送られてきたそうです。
柏木はこの真偽を計りかねていたようですが、明日、原田を捕えて、話を聞くと言う事になったようです。
完全にわなにはめられた。そう言わざるを得ない状況です」
「あの事件で、テロリスト側にも目を付けられたようね。
あの子の話では、一人目の超人を倒した後に二人目が現れたと言う事だから、その画像を撮ったのは二人目の超人と考えるのが自然ね。
超人たちが同時に現れなかった事から言っても、あなたの言う通り、わなにはめられたようね。
目的はどうやって、超人を倒すのか。それを確かめるため」
「まずいですね」
「あの学校にはテロリスト側の手も潜り込んでいると考えた方がよさそうね。
まあ、テロリスト側はあの事件の後に移ってきた人物を抽出すれば対応は可能だし、反撃につなげられるかもだけど、問題は治安維持特殊部隊の方ね。
彼女たちを相手にして原田を助ける力は残念だけど、私たちには無いわ」
「身を隠させますか?」
「そうね。でも、それだと完全に、超人たちを殺したのがあの子だと認めた事になってしまうじゃない。
できれば、その疑いを消し去りたいんだけど。
そうね。彼に相談してみますか」
「彼とは?」
「河原君よ」
「河原真。
確か組み替えられた遺伝子はごく一部であって、全体としては超人レベルに達していないはずでは?
それに彼は我々の組織と直接関係していませんので、話を聞いてくれるのでしょうか」
「彼には守りたい子がいるの。
彼はその子のためにも超人を全て消し去りたいと思っているの。
この組織だって、あの子が私を使って、作らせたようなものなんだから、私たちが無くなれば、超人を造る技術を封印できなくなるって事くらい分かっているはず。
それに原田の話から判断して、あの子を救ったのは彼に違いないわ」
「どう言う事なんですか?
彼は原田の近くにいるんですか?」
桐谷は男の問いにちらりと視線を向けただけで、何も返さず、スマホを手に電話をかけ始めた。
「あ。私、桐谷だけど。
ちょっと、困った事になっちゃってるのよ」
桐谷は河原に、さっき男から聞いた報告事項を伝えた。
「事情はそんなところなの。
あなたの言うとおり、原田の身を隠させると言うのは手なんだけど、だとすると超人たちを殺したと認める事になって、彼女はずっと追われる事になるのよ。
何か手はないかしら?」
相槌を打ちながら、河原の話を聞いていた桐谷の手が止まり、表情が大きく曇った。
「ありがとう。感謝するわ。
でも、本当にそんな事をする気なの?」
少しして、桐谷が言葉を続けた。
「そう。分かったわ。
よろしくね」
そう言って、桐谷は電話を切ると、桐谷は表情を再び曇らせた。
「彼の作戦って、なんだか……」
そこまで言って、頭の中に浮かんだ何か嫌なものを振るい落とすかのように、数回頭を回してつぶやいた。
「そんな根拠も無い事、考えてる場合なんかじゃないわ」
桐谷が座っている椅子の向きを反転させ、ガラスの向こうに見える夕日が沈もうとしている街に目を向けた。




