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Pandora(改稿版)  作者: あすか@お休み中
第3章:鋼鬼狩りの俺は最強剣士……かな
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わな

 桐谷の所を目指す俺たちを乗せた車の車窓を流れる光景は、グレー一面の世界だ。人がいないだけで、こうまで廃れるのかと思わざるを得ないほど、地方の都心部に並びたつ人工の建築物は輝きを失っていた。

 だが、物理的なダメージはそう大きくはなく、建物自身が崩壊なんかはしていなかった。

 そう、それは今までの話であって、今はちょっと違って来ていた。


「まただ」


 ハンドルを握る上本が、アクセルからブレーキに足を移しながら言った。

 自然と前のめりになる体勢のまま、フロントガラス越しに視線を前に向けた。

 散らばる大きなコンクリートとむき出しの鉄筋。

 道路に沿って建っていた中層の建物を爆破した残骸らしい。いや、残骸と言うのは、不適切かも知れない。それらは、正しくは俺たちの進路を塞ぐための急造の壁である


「今度はどこに俺たちを追い込む気だ?」


 俺の言葉に、土居がマップを開いた。

 土居が人差し指でマップ上の自分たちの位置を指さし、進路に沿って動かしている。

 その先に何かを見つけるのでは? そんな期待を抱きつつ、土居の言葉を待っている。


「うーん、分かんないわね」


 思わず、シートからずり落ちそうになるのを堪えて、不満げに返す。


「なんだよ、それ」

「だって、道路網は広く広がっているんだから、分かる訳ないじゃない」

「きっと、また鋼鬼を使って来ると思うんだよね」

「河原君、ただ今度は同じやり方じゃないはずだ」


 福原が言った言葉に、俺は頷いた。

 敵も馬鹿じゃない。同じことは繰り返さないはずだ。としたら?


「もっと、鋼鬼を集められる場所かな?」


 沢井が言った。俺たち三人でも、打ち破れないほどの厚い壁を鋼鬼で築くと言う事だろう。そんな鋼鬼の壁を頭の中にイメージすると、俺たちが鋼鬼に敗れ去る未来が浮かんでくる。


「消耗戦になると、私たちに不利だね」


 沢井が言ったが、その通りだ。


「まただ」


 上本がそう言って、進路を変えた時、土居がマップの一点を指さしながら、大きな声を上げた。


「ここじゃない?」


 土居は指さしたまま、マップを福原に見せた。俺も気になるところだが、俺の位置からではその場所がどこなのか、確認する事はできやしない。


「運動公園か」

「その公園を鋼鬼で埋め尽くすって事?」


 沢井が言った。どんな広さの公園か知らないが、公園一面鋼鬼なんて、ぞっとせずにいられない。


「進路変えますか?」


 減速しながら、上本が福原にたずねた。


「そうだな。

 万が一を考えて、次の交差点を左に曲がって、北上して進路を変えよう」


 福原の言葉に上本が減速しながら、ハンドルを左に切った時、車の中にまで何かが爆発した音と衝撃波が伝わって来た。

 フロントガラスの前に広がる道路に沿って建つ中層の建物が突然崩れ落ちてきた。

 カーブを切るため、速度を落としていた俺たちの車は、その崩落に巻き込まれることもなく、停車した。


「ここは通れないですね」


 上本の言葉通り、崩落した、正確には爆破された建物の残骸は、道路一面に飛び散っていて、車で通る事はできそうにない。


「敵は近くにいるようですね。

 で、さっき言っていた公園はすぐ近くですか?」

「ああ。そうだ」


 河原の問いに福原が答えた。

 どうやら、福原の読みは正しかったのだろう。


「でも、私たちをそこに追い込んだ後はどうするのかしら?」


 マップに目を向けたまま土居が言った。


「今からでも、引き返しません?」

「無理じゃね?

 近くで見張られているのなら、退路も絶つだろう」


 武本の考えを、ばっさりと俺が即否定した。


「じっとしていても、仕方ないだろ。

 とりあえず、向かって行くか」


 福原が言った。きっと考えあっての事と信じたいが、そうでなかったこともあるだけに、ちょっと不安だ。

 上本が後退させ、元の道路に戻ると、再び直進を始めた。


「あれは?」


 河原がフロントガラス越しに見える何かを指さした。


「なんのことだ?」

「病院!」


 河原の言葉どおり、すぐ先の道路標識には県立病院がこの先にある事が書かれていた。


「あれが、どうかしたのか?」


 俺が聞いてみた。


「あの先に広がる木々が公園だとすると、その手前に病院があると言う事になる。

 もしも、屋上にヘリポートがあるとしたら」

「なるほど。

 奴らは早川さんを拉致って、空から逃げると言う事か」


 福原が河原の言葉を受けた。ちょっと癪だが、河原と言う奴は、こう言う策に関しては、俺よりも上手なのかも知れない。


「だろうね」


 癪だと言う思いを隠して、俺もそう思っていたぜ的に受け流してみた。


「なんだか、河原に言われる前から、自分でも思っていた的なんだが」


 武本が俺の心を見透かしたかのような、かすかな笑いを浮かべながら言った。


「当たり前だろ」

「だったら、俺たちを追い込んだ後、どうすると思うんだ?」


 俺を今、ここで追い込んでどうする!! と言い返したいような言葉を武本が続けた。


「それはだなぁ」


 それ以上の言葉は出るはずもない。


「前面から鋼鬼。

 その鋼鬼に気を取られている間に背後から、兵士たちって、ところだろ。

 そして、早川さんを拉致って、ヘリポートからこの場から離脱」


 言葉に詰まる俺を助けるかのように、福原がすぐに言葉を挟んできた。

 その福原の言葉が正しかった事は、すぐに証明された。


 道路を直進する俺たちの目の前に広がる公園。左右につながる道路は、やはり破壊された建物の残骸で埋め尽くされていて、俺たちに許される選択肢は直進だけだった。

 公園の中へと誘う道路に沿って、木々の隙間を縫って直進すると、広い空間が現れた。

 そうきっと広い空間だ。鋼鬼たちがいなければ。

 公園の敷地半分は埋め尽くしているのではと言うほどの鋼鬼たちの塊。

 俺に沢井、そして河原が斬り込んだとしても、崩せそうにもない。


「どうしますか?」

「どうやら、今度は日干し作戦じゃないらしいな」


 上本の言葉に返した福原の言葉通り、よく見ると鋼鬼たちはゆっくりとだが、前進してきていて、俺たちとの距離を徐々にだが縮めて来ていた。

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