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第十六話 九月一日 姫 vs 志穂 熱き舌戦

最近、いろいろあって更新が出来てません。

すみません……

というか、こっちじゃなくて、そろそろもう一つの連載どうにかしないとなぁ……

まぁ、僕の計画性のなさは置いておいて、どうぞ楽しんでください。

「痛いじゃない、何するのよ」

殴られた姫はジト眼で睨みつつ、そう言うが、

「変態は黙っていてください」

ガン、とまた再び鈍い音がする。

志穂はとりあえず取り合うつもりは毛頭ないみたいだ。

また、同じように角で殴ったのだろうが、なかなかやる事が残酷だ。

なんだか、女性の怖さの片鱗を見たような気がする。

と言うよりも、彼女もこんな事をする人だったんだ、その事実の方が、ショックが大きい。

いつも、大和撫子のように、穏やかで優しい笑みを浮かべていた姿はそこにはない。

「変態とは、失礼ね。私たちは、相思相愛なの。恋人なの。キスをし合うような仲なの。つまり、あなたは、お邪魔虫。お分かり?」

そんな彼女に、噛み付く姫。

そんなものになった覚えなんてないので、文句を言いたいところなのだが

「あなたが、先輩の恋人?冗談は休みや休みにしてください。真面目な先輩が、あなたみたいな淫逸な人を恋人にするわけがありません」

僕が口を挟む間もなく、彼女が応戦している。

本来なら、この場面は、僕が口を出すはずだし、そもそも彼女には、口論する理由なんて、ないのに、どうしてそうなるのか、全く予想が付かない。

それに、淫逸、という言葉を彼女は知っていた事も驚きだ。

そういう方面には疎いとばかり思っていたから、そんな言葉が出てくるとは思わないし、第一、そんな言葉は使わない。

僕だって、一瞬、淫逸と聞いて、分からなかった。

「あら、由貴だって、男の子なのよ。いつも一緒にいれば、そういう気持ちになってもおかしくないわ」

「そんな事はありえません。密室で二人きりになっても、何もしないような先輩なんですから」

「それは、あなたが魅力ないからじゃないの?そんなちっさな胸じゃ、由貴だってそんな気もおきないでしょうしね」

「私は大きさじゃなくて、形で勝負なんです!」

そして、さらに舌戦はヒートアップ。

とはいえ、どちらかと言うと、姫の方が優勢。

まあ、確かに、見た感じ、姫に比べると志穂の胸は、少々小さい。

だからと言って、別に志穂の胸が特別小さいわけではなく、姫が少々大きいだけで、気にする事ではない。

それに、別に僕は大きいのが好きなわけではない。

まあ、そりゃ、確かに大きい事に越した事はないのかもしれないけど、だからと言って、どうしても大きくないとダメ、というわけでもない。

――と、僕は何を冷静に分析しているのだろう。

二人の女子の胸の大きさ談義を冷静にしている場合じゃないはずだ。

一瞬、どこかに意識が行きかけたが、それを何とかたぐい寄せる。

ここは、がつん、と割って入って止めるべきだ。

よし、行け、由貴。

ここで男を見せないといつ男を見せるんだ。

「とりあえず、落ち着……」

「あら、私だって、形は綺麗よ。スタイルを保つために、それなりにエクササイズはかかしてないんだから」

「だから、落ち……」

「それってつまり、エクササイズをしないと現状を保てないほど、老化してるって事でしょう」

なんていったところで、結局、僕の負け。

一生懸命になって割って入ろうとはするが、全く効果はなく、完全に無視、シャットアウトだ。

完全に二人だけの世界に入ってしまい、僕の存在は蚊帳の外になっている。

「……はあ」

思わずため息が出る。

なんで、こんな事になっているのか、いまだに分からない。

だいたい、なんでこんな喧嘩になるのだ。

これじゃ、まるで、一人の男を奪い合う女二人の争奪戦みたいじゃないか。

姫は、僕の事を食料としか思っていないはずだし、志穂だって、ただの先輩と後輩の関係なのだから、そんなものになるはずはない。

姫の場合は、まだ、自分の食料が取られそうになっているから、それに対して怒っている、と言う可能性もあるのだが、それはそれで、なんとなく彼女の話している様子を見たら、素直に頷けそうにない。

だからと言って、じゃあ、どんな理由なのかと聞かれると分からないが。

それに、志穂の事だって、確かに、仲はいいし、親しい友人と言っても間違いはないだろう。

けれど、あくまでも親しい友人で、それ以上の関係ではない。

例え、自分の友人がいかがわしさ満点の女性に誘惑されているのを見過ごせないから、という理由で、言い争っているとしても、少々行き過ぎの感も否めない。

こんな奪い合いのような喧嘩になるはずがないのだ。

それとも、本当に、僕の事を奪い合っているとでも言うのだろうか、こんな容姿も並、勉強も並、運動神経も並な、この僕を。

「違うわよ。よりいっそう、由貴に愛してもらえるための身体を作っているだけの事。つまり、愛が為せる技よ」

「残念でしたね。私の友人からリークしてもらった先輩のフェチ情報では、スレンダーで華奢な人が好きなんです。あなたみたいに、無駄に肉付きのいい身体じゃ、先輩はなびきません」

――なんとなくだが、そう思えるようになってきた気がする。

姫は姫で、僕への愛とか言ってるし、志穂は志穂で、僕のフェチ情報をリークしてもらっている。

そんな言葉を聞いたら、もうそう思うしかないだろう。

とはいえ、今更つっこむのも、なんだと思うけど、そもそも、姫は、霊で死んでしまっている以上、体重は増えたり減ったりしないのだから、エクササイズなんかをやっても意味はない。

どんな事をしてもスタイルなんてものは変わりはしないのだ。

だというのに、それに触れない志穂。

もしかしないでも、目の前にいるのが霊だと気付いていないんじゃないのだろうか。

気付いていれば、霊相手にいちいち目くじら立てても仕方がないと割り切れるはずだし、我慢が出来なかったとしても、あっさりと調伏させてしまうはずだ。

それなのに、それをしないと言う事は、全く分かっていないと言う事だろう。

明らかに、目の前にいる姫は、それと分かる雰囲気をぷんぷん振りまいているのに、専門家の彼女がそれを見逃してどうするというのだ。

それとも、それが分からないぐらいに、頭に血が昇ってしまっているのだろうか。

もし、そうなら、僕の中での鈴原志穂像を少し修正する必要があるだろう。

「ふん、例え、そうだとしても、あなたみたいに、経験のないねんねの女じゃ、由貴は満足しないのよ。私みたいに、経験豊富な大人の女性じゃないとね」

「何が経験豊富な大人の女性ですか。単なる淫女なだけじゃないですか」

それにしても、よくよく続くものだと思う。

彼女達の言い合いを、聞いていると、そう思える。

とりあえず、僕が何を言っても無駄な事は分かったので、傍観者の立場を取る事にした。

観察しているだけでは、解決なんてしないだろうが、完全に無視されている以上、どう動いたところで、解決しそうにもないと思う。

それに、姫の突撃の事ですっかり忘れていたが、志穂の昼食の事だってあるのだ。

こんなところで、無駄にじたばたするよりも、さっさと下に降りて、母に言いに行った方が建設的だろう。

「あー、たぶん、聞こえてないと思うけど、下に降りるから」

「淫女って、失礼な人ね。言っておくけど、私は安売りなんてしないわ」

「じゃあ、どうして、嫌がる先輩を無理やり押し倒してたんですか」

とはいえ、一応、何も言わずに降りた、とばれたら、二人の熱が今度は僕にきそうなので、申し訳程度に言ってみたのだが、案の定無視された。

最初から分かっていたはずなんだけど、実際に無視されると、なんだか、そこはかとなく切なくなる。

ほとんど、負け犬気分で、とぼとぼと部屋から出る。

相変わらず背後では、女二人の戦いが繰り広げられている。

せめて、部屋に戻ってくるときまでには、終わっていて欲しい。

まあ、たぶん、期待するだけ無駄だろうとは思うけど。


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