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第十四話 九月一日 二人でお片づけ

ちょっと間隔空きましたねぇ。

うん、まぁ、大丈夫さ。

今日は二話更新だしww

「……ん、ごちそうさま」

そして、饅頭の最後のひとかけらを食べ終えると、残っている紅茶も一気に飲む。

まだ、少々熱いが、それでも、一気に飲めないほどではない。

彼女の方も、紅茶がまだ半分ほど残って入るぐらいで、饅頭の方は、食べ終えている。

まあ、一つしか持ってきていないのだから、すぐになくなってしまうのは当たり前か。

お茶も飲み終わり、手持ち無沙汰になったので、周りを見渡す。

相変わらず、物凄い散らかりよう。

もし、これを僕が学校に行っている間の数時間の間にやったというのなら、すごいものだ。

ある意味才能と言ってもいいだろう。

もちろん、褒め言葉ではないが。

「……ごめんな。わざわざ来てもらったのに、家には誰もいないわ、部屋は散らかってるわ、目的の奴はいないわ、で。本当に申し訳ない」

しかも、勝手にいなくなるし。

本当に困ったものだ。

「いえ、構いませんよ。こうして、遊びに来るだけでも楽しいですし」

「そう言ってくれると助かるよ」

彼女がまだ笑ってそう言ってくれるから、ましだけど、僕としては非常に心苦しいものがある。

できる事なら今すぐ帰ってきて欲しい。

そうじゃないと、間が持たない。

なんともなしに彼女の方をちらりと見てみる。

とりあえず、退屈じゃないか心配だったが、彼女は興味深そうに、きょろきょろと辺りを見まわしてる。

何か、おもしろいものでもあるのだろうか。

まあ、男子にしてみれば、女子の部屋なんかは完全に未知の世界で、いろいろと気になってしまうところがあるから、彼女がそうしてしまうのも、そういう気持ちと似たような物なのかもしれない。

とはいえ、この部屋には、どこにも男子特有の物はない。

それこそ、ベッドの下や本棚の裏に置かなければならないような類の本なんて一冊もない。

そんなものが、見つかった日には、それをネタにして、姫が襲ってくるかもしれない。

まあ、それ以前に、あんまりそう言うものには興味がないというのもあるけれど。

「すごいだろう、この散らかりよう。昨日の夜に頑張って綺麗にしたのに、僕が高校に行って数時間空けている間に、これだけの事をやるんだから」

「ふふ、そうですね」

床に散らばっている本を手に取ると、ため息混じりにそう言う。

その言葉を聞いた彼女も、苦笑している。

「ある意味才能だね、ここまで来ると」

そんな彼女につられて、僕も苦笑すると、立ち上がり、手に持っているマンガ本を元の場所に戻す。

お客がいる以上、母が家に帰ってきたら、様子見ぐらいしにくるだろう。

その時、散らかっていたら、またお小言を言われてしまう。

「あ、手伝いますよ」

更に、床に散らばっているマンガ本を拾い、元の場所に場所に戻していると、彼女も立ち上がり、手伝いを申し出てくれる。

本当にありがたい。

「ありがとう」

素直にお礼を言うと、手伝ってもらう。

一人でやるよりも二人でやるほうがはかどる。

彼女が、それぞれ同じシリーズに集めて、それを僕が本棚に並べる。

散らばっている量はかなり多いが、それでも、彼女が手伝ってくれているおかげで、早く終わりそうだ。

これなら、母が帰ってくるまでに終わってしまうだろう。

受け取ったマンガ本を、本棚に並べつつ、彼女の方へと視線を写す。

てきぱきと動くその姿は、掃除をやり慣れているように見える。

たぶん、これが姫だったら、こうはいかないだろう。

そもそも、掃除なんて物はしないし、手伝いを頼んだところで、何もしないのだが、それでも、もし手伝ってくれたとしても、足手まといになっても、戦力にはならないだろう。

本当に、どうしようもない霊だ。

「うし、終わり、と。ありがとね」

「いいえ、構いませんよ」

最後のマンガ本を受け取ると、それを元に戻し、ようやく終わる。

時間としては、数分とかかっていない。

思ったよりも疲れなかったのは、彼女のおかげだろう。

一人で鬱々とやるよりも、やはり誰かと一緒に協力してやるほうが、楽でいい。

「んじゃ、ちょっと紅茶淹れなおしてくるから、ちょっと座って待ってて」

とはいえ、それでも少々疲れたし、喉も渇いた。

それに、手伝ってもらったのだから、何のお礼もしないというのも気が引ける。

彼女を、テーブルの傍に座らせると、ポットをトレイに載せると、そのまま部屋を出て、そのままダイニングに向かう。

その途中で時計を見たが、針はもうすぐで十二時を指そうとしている。

と言う事は、さすがに、そろそろ母も帰ってくるだろう。

昼ご飯の準備だってあるわけだし。

先ほど取った同じ方法で、紅茶を淹れると、また、階段をのぼり、部屋に戻る。

「ただいま。はい、どうぞ」

そして、座っている彼女の目の前にあるカップに紅茶を注ぐと、差し出す。

「ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」

彼女のお礼に答えながら、今度は自分のカップに紅茶を注ぐと、口をつける。

さっきと同じメーカーの同じ銘柄のはずなんだけど、味が少々違う。

さっきよりも、少しだけ渋い。

どうやら、少々浸しすぎたようだ。

まあ、僕は、渋いものや苦いものには、ある程度耐性があるし、基本的に紅茶とかコーヒーは、ノンシュガーノンミルクで飲むので、そんなに辛くはない。

「ん、美味しい」

けれど、彼女は違うかも知れない。

そう思って、ちらりと彼女の方を見てみたが、意外にも美味しそうに飲んでいる。

彼女も渋い物には慣れているのかもしれない。

そう言えば、彼女の家に行った時、茶室があったから、抹茶とかを飲む機会が良くあったのかもしれない。

もしそうなら、渋いのに慣れているのも分かる。

一度、小学校か中学校か忘れたが、お茶を点てる機会があったんだけど、あの時飲んだ抹茶の味は今でも忘れない。

もう、なんと言うか、思わず顔をしかめ、口中が気持ち悪くなるほど渋かったのを覚えている。

その時は、本当に、このんで抹茶を飲む人の気持ちが全く理解できず、舌がおかしいんじゃないのか、と、そう思ってしまったものだ。

もちろん、今も理解できない。

もし、お茶を出されても、即座に拒否するだろう。

あんな苦くて渋くて口中が、何とも形容しがたい不思議な感覚に苛まれるような物を飲みたいとは思えない。

再び、カップに口を付け、紅茶を飲む。

ちょっとだけ渋みと薫りが増した紅茶は、それはそれで美味しい。

さっきみたいに、渋みと薫りが弱いのも、好きだが、僕としては、こっちの方が割りと好きだ。

淡い味よりも、やっぱり、しっかりとした味の方がいい。

まあ、舌が肥えてなくて、しっかりと味が付いてないと、良く分からないから、と言うのもあるが。

最後の一口を一気に飲むと、カップをソーサーの上に置く。

彼女の方を見てみると、まだ、半分ほど残っている。

そんな彼女から視線を外すと、ぼんやりと窓の外を見る。

相変わらず、窓の外から見える空は、青く澄みわたり、顔を覗かせている太陽は燦々と照りつけている。

こんな時期に、良く出かけるものだ。

姫の事を考えていると、思わずそんな事が浮かんだ。

まあ、霊だから、実体化していないかぎり、暑いとか寒いとか、そう言ったものは感じないだろうが、それでも、こんな時期に出かけたいとは思わないはずだ。

霊なら霊らしく、もっと暗くてじめじめとしたところを好んで欲しい。

それとも、もしかして、このまま帰ってこないつもりなのだろうか。

全く相手にされない事に拗ねて、別の相手を探しに行っているのかもしれない。

もしそうなら、本当に助かる。

まあ、たぶん、そんな事にはならないだろうと思うけれど。

どんなに、僕以外の人に憑け、と言っても、無視して、僕に憑いて迫り続けてきたのだ。

いきなり、ここであっさりと手を引くとは思えない。

それに何より

「ん、美味しい」

ここで、いなくなられたら、志穂になんて言えばいいのかわからない。

わざわざ会わせに来たのに、いなくなりました、では困る。

それに、下手したら、霊にあわせる事を口実に、彼女を誰もいない家に連れ込んだ、そう誤解されてしまうかもしれない。

たぶん、彼女の事だから、気を悪くするような事はないだろうが、それでも、やはり気持ちがいい物ではないと思う。


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