第7話 外の世界
どうしたもんだろう
俺、ブルースは小さくため息をついた。
追い出すつもりだった赤ずきんはあっという間に俺の心の中に住みついていた。
まぁ、兄貴の話のおかげなんだけど・・・
仕方ない 置いてやるって言った以上、面倒見るしかないな
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「仕方ないな 今日は外に出るか」
「本当!?」
「お前の物が色々と必要だろう?」
私はにっこりと笑って頷いた。
やったやった!!
外の世界が見れるんだ!!
あれ?そういえば私の物ってなんだろう?何が必要なんだろう?
あっちの世界じゃ服はいつも同じだったしお風呂もトイレもなかったんだよね。
まぁ、おばあさんの小屋には色々とあったから知ってたけど。
「あのさ、悪いけどこれ取ってくれよ」
ブルースはそういうと私のずきんを取り上げた。
「えぇ!?それ、取らなきゃだめ!?」
「あのな、ずきんなんてかぶってる奴いないんだよ。しかもこれ結構汚いなー洗濯しといてやるよ」
私はイマイチ納得できなかったけど、一応ずきんを預けることにした。
あれないとなんだか頭がむずむずするんだけどな・・・
「まぁ、服はただのワンピースだしいっか・・・服も買えばいいし」
ブルースはぶつぶつ言うと玄関に向かい、靴を履く。
「ホラ、行くぞ」
「う うん!」
私も慌ててブルースについていく。
外に出るとそこはやっぱり私にとって夢の世界だった。
「うゎ・・・すごぉ・・・」
人がいっぱい!!
中途半端な数の木
木じゃない何かでできてるたくさんの建物
臭いにおい
「くさぁ・・・」
私がつぶやくとブルースが苦笑する。
「タバコのにおいかな?俺は吸わないんだけど。」
「ブルースって、何歳なの?」
鼻を押さえて鼻声で言う。
「ん?19・・・20だったっけ?忘れた。誕生日いつだかわかんねぇし」
「へぇ 人間でもそういう人いるんだぁ・・・」
「そういうお前は?」
「・・・・・・・・・忘れちゃった」
本当は忘れたわけじゃない
忘れたんじゃなくて 誕生日なんて存在しないはずなんだ。
気がついたらあの場所にいたんだもの。
だけど どうしてだろう
『嘘つかなきゃ』って 思っちゃったんだ
どうしてかなんて 自分でもわからないけど。
「そういやさー赤ずきんって狼のいる小屋に絶対に入るだろ?あれって小屋に入らなきゃいいんじゃねぇの?」
ブルースが思い出したように言う。
私は思わず苦笑した。
「・・・無理だよ」
「え?」
「小屋が目の前に現れれば私は絶対に小屋のドアを開けるしかないの。どんなに嫌でも体が勝手に動いて開けてしまうの。」
「・・・・・・ふぅん」
私だって 逃げられるものなら逃げる
だけどたとえドアを開けなくてもあの世界から逃げることはできなかった。
逃げたって 逃げ出した場所はどうせあの世界の中なんだから。