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第5話 狼の想い

「うるせぇな・・・他人の家で騒ぐんじゃねぇよ」


あの男の不機嫌そうな声が聞こえる。


あぁ、どうなってるんだろう!?


出てったらばれちゃうし・・・覗くわけにもいかないし・・・



「じゃあ赤ずきん出せよ いんだろ?」

「何が赤ずきんだ そんなのいるわけねぇだろ?」

「・・・嘘だね アンタ赤ずきんのにおい、プンプンさせてるよ。俺は鼻が効くんだ」


そうだ 狼だから鼻が効くんだ!?


狼と鬼ごっこなんて不利じゃん!!


「・・・いたとしても赤ずきんが望まない限り俺は手助けしないね」

「いいから赤ずきん出せって!」

「うっせぇな・・・いいじゃねぇかアイツの自由にさせてやれば」


たぶん、男が舌打ちをした。


そうだそうだ!近所迷惑だ!早くどっか行っちゃえー!


心の中で叫ぶと、大きな鈍い音がした。



ガンッ!!!


壁を殴ったような音。


たぶん、(ブロント)だろう。


「アイツの自由になんて、させたくねぇ!」

「はぁ?」

「アイツの自由にさせたら俺はもうアイツに会えないんだよ!会ったら捕まえたってことになるから・・・」


ふと、2つ目のスイッチの『キッカケ』を思い出す。


そっか (ブロント)に捕まえられたらいけないってことは(ブロント)と会えないってことなんだ・・・



(ブロント)は大事な家族みたいな感じだけど・・・でも、(ブロント)よりもこっちの世界のほうが・・・




「俺はアイツが好きだから、会えないなんて嫌なんだよ」



ドクン と心臓が怪しい音をたてた。




目の前が真っ黒になった気がした。




黒いものが胸の中で渦巻いてる気がした。



「アイツはずっとこの世界を信じて待ってた。待ってたってどうしようもないしもしかしたら裏切られるかもしれないのに。」

「・・・そうだな」

「・・・そういうアイツを見ると、抱きしめたくてきりがないんだ」



男がドア越しに私を見た気がした。



心臓は相変わらずドクンドクン言っていて、胸の中は黒いものが渦巻いてる。



私は右手で自分の左手をぎゅっと強く握り締めた。



「赤ずきん!!!」


ビクッと体が震える。


「どうせ聞こえてんだろ!?俺は1回もお前に嘘ついたことねぇ!だから絶対にお前のこと捕まえるからな!!」


バンッ!!!!!



(ブロント)の大声の後、負けないぐらい大きなドアの閉まる音がした。



少しの間沈黙が続いた。



ガチャッ



寄りかかっていたドアが開かれて、私は外に飛び出す。


「ぅわ!?」

「・・・いつまでもトイレにいるなよ」

「・・・ごめんなさい」


私は小さな声で謝ると、また座布団に座った。


「告白までされて、でもこの世界にいたい?」


ストレートな質問に心臓がまた騒いだけど、私は小さく頷いた。



(ブロント)にあんな風に思われてたなんて知らなかった



だけど 私は同じように思ったことない



妙に重い空気に耐え切れなくなり、私は背の低いタンスの上にある写真たてを見た。


そこには男と、その男に似た少し背の高い男がいた。


「・・・これは誰?」


背の高いほうの男を指差すと、男はため息をついた。


「俺の兄貴。」


それだけ言うと男は写真たてを素早く机の中に閉まった。


1秒でも見られたくないようだった。


「・・・貴方の名前は?」

「・・・ブルース」

「ブルース お願いだから私をここにおいてよ!つかまりたくないの!」



(ブロント)の気持ちを知ってしまったら なおさらだった。


これから先どう(ブロント)に接すればいいの?



あの白い無の世界は私と(ブロント)と後ほんの数人で成り立ってた。


そのほんの数人なんてほとんど喋ることない。



あの世界で(ブロント)を避けるなんてできそうにない。



「さっきもおいてやるって言っただろ」


ブルースはため息混じりに言う。


私がぱぁっと顔を明るくするとブルースは眉間にしわを寄せた。


「ただし!条件が2つある。」

「何!?なんでもする!」

「まず1つ このパソコンに触るな」


ブルースは机の上にあった大きい機械を指差した。


触ったら壊れそうで怖くて触れないよ!


心の中で悪態をついたが、一応頷いた。


「それから、2人で住んでるって気づかれないようにしろ。お前は俺の許可がない限り外に出ちゃいけない」

「えええ!!?」

「嫌ならいいけど?」


男は器用にまゆを上にあげて私を見下すような態度をとる。


「だって・・・せっかくこの世界に来れたんだから外を見たいよ」

「・・・・・・じゃあそのうち連れてってやるから」

「本当!?だったらいいや!!」


私は思わずばんざいをする。


それを見た男はいきなりふきだしておなかを抱えて笑った。




あぁ、よかった!!


これでこの世界にいれそう!!


この人も優しそうな人だし、本当によかった!!



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