第38話 おばあさんと気持ち
ブロントと話した後、私は久しぶりに『赤ずきん』の童話のおばあさんに会った。
おばあさんは私の話を聞くと満足気に微笑んだ。
「そう、そんなことがあったの。」
「うん。」
「赤ずきんは、楽しかった?」
私は少しだけ黙っておばあさんの顔を見た。
おばあさんは、私が黙っても返事を待ってにこにこしていた。
「・・・うん」
そう言って微笑むと、おばあさんは『そう』と言った。
「私ね、ずっと気がかりだったのよ。」
「何が?」
「貴方にあの話をしてよかったのかどうか。『赤ずきん』にあの話をしてよかったのかどうか。」
「・・・よかったんだよ」
「そう、ならいいの。」
私とおばあさんはしばらく黙っていた。
その沈黙の間、おばあさんが何を考えてたのかわからない。
だけど私は、ブルースのことを考えてた。
ブルースに会いたい。
でもあの世界にいたかったとは思わない。
どうしてだろう?
どうしてブルースに会いたいんだろう?
「でも、残念だわぁ」
「なにが?」
「だって、『マゼンダ』はその男の子のこと好きだったんでしょう?」
「・・・え?」
「今、貴方は『赤ずきん』だからどうだかは知らない。でもね、さっき貴方が話したのは『マゼンダ』の話でしょ?」
私は黙って頷いた。
「私が思うに、『マゼンダ』は男の子のことが好きだったんじゃないかしら?だから・・・」
おばあさんが言う前に、私の目から涙がぽろぽろと流れた。
そんな私を見ておばあさんはただ微笑んだ。
あぁ そっか
簡単なことだった。
どうして気づかなかったんだろう?
おばあさんに言われるまで気づかなかった。