第37話 真っ白な空
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ただただぼぉっと真っ白な空を眺めてた。
空って青いものじゃなかったっけ?
どうしてこの世界の空は真っ白なの?
ため息をつくと、頭にこつんと何かがぶつかった。
振り返ると、そこにはブロントがたっていた。
「・・・ブロント」
「何してんだ?」
「何って・・・別に、することないじゃんか。こんなとこで」
私が冷たく言うと、今度はブロントがため息をつく。
「・・・こんなところ戻りたくなかったのに。」
「じゃあ、あのままあそこにいたかった?」
私は黙って首を横に振って、また前を向いた。
あの場所にいたくはなかった。
あの場所にいたら自分が何なのかわからなくなる。
私はあの世界の人間じゃなくて
なんていえばいいんだろう?
自分がそこにいるのに、いたらいけないような気持ちになるときがある。
いたらいけないっていうか、いないような気もする・・・
「俺はここに戻ってきたかった。」
また振り向くと、ブロントは私の隣に来た。
「俺はアイツにマゼンダのこととられたくないって思ってた。この世界に、2人でいたいって思ってた。」
そんなこと言われても・・・
「・・・ッ私は!」
俯いて、吐き出すように早口で言った。
「こんな世界にいたくない!!戻りたくなかった!ブロントと・・・
2人でいたいなんて思ったことない!私はブルースといたかった!!」
はぁっと大きく息をつくと ブロントは私の頭にぽん、と手を置いた。
「だろうと思った。」
ブロントの言葉に驚いて顔をあげると、ブロントは笑ってた。
この世界にいたくない
でもあの世界にもいたくなかった
あんな状態で あんな気持ちで
あの場所に存在したくなかった。
存在しちゃいけなかった気がした。
だけど
1つだけ
「・・・ッブルースと一緒に・・・いたかった」
「・・・うん。本当は、結構前から気づいてた。」
「え?」
ブロントは私のほうを見ず、横のほうを見ていた。
「俺さ、あの世界についてからずっとマゼンダ達のこと監視してたんだ。
アイツの家のドアで聞き耳たててみたり、2人が外出したらつけてみたり。」
それを世間ではストーカーというけれど。
「だからずっと前から、マゼンダのことは気づいてた。」
「・・・私の、こと?」
私が聞くと、ブロントは口を開きかけてすぐに閉じた。
それから続きを言わずに、にっこりと笑った。
「ごめん、教えない。」
「へ?」
「ここで教えちゃったら少し悔しい。」
答えと、ブロントの言葉の意味を私が理解するのはもう少し先だった。