第36話 灰になった世界とサミシイ
私の中で色づいていた世界は私の中で灰になった。
また私は真っ白な世界の中にいる。
自由だと思っていた世界
あの世界の中にいき、私は喜んだのに。
なのにどうしてこんな気持ちになるの?
「・・・ブルースのばか」
1人で呟いてみた。
その声も色づくわけもなく真っ白な世界に飲み込まれて消えた。
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何も残っていなかった。
『確かにここにマゼンダはいた』という証拠が何一つ。
ずきんもワンピースも携帯も。
何も残ってはいなかった。
俺の携帯のデータフォルダに確かに保存されたマゼンダの画像も。
何もかもが消えた。
俺の脳内に苦い記憶だけを残してマゼンダは消えた。
それでも俺は 元の生活に戻ろうとした。
前のように1日中家で本を読んだり小説を書いたりした。
たまに外に出て買い物もして、時々仕事関係者と連絡もとって。
クロウとリンさんにマゼンダのことは言わなかった。
ルファにだって言うつもりはなかった。
だけど、バレてしまった。
電話で『また打ち合わせしよう』と言われて断ると、それだけで勘付かれてしまった。
だけど、俺以外にもマゼンダを覚えている人がいて少し安心した。
俺の夢なんじゃないかって思ったところだったんだ。
ふと、溜まった洗濯物のカゴの奥にマゼンダのために買った洋服があった。
「こんなの残して・・・どうすんだよ」
洗濯せずにしわくしゃになった洋服にぽとりと涙が落ちた。
今まで通りのはずなのに。
1人でこうしていたはずなのに。
ただ 元に戻っただけなのに。
どうしてだ?
1人に慣れてたはずなのに。
ずっと1人でいたのに。
なんでいまさら・・・
『サミシイ』なんて・・・