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第35話 消えた人

それからマゼンダは、3日に1回ぐらい発作的に泣くようになった。


理由を聞いてもマゼンダは答えない。



毎回俺は黙ってマゼンダを見ているしかなかった。


たまに肩をさすってやったり、タオルを渡してやるぐらいしかできなかった。


そんなのがしばらく続いたある日だ。


コンビニで牛乳を買って家に戻ると、マゼンダは床に座り込んでぼーっとしていた。


「ただいま」

「あ、お、おかえり」


どうしようか、と何度も考えるけど いつも結論は同じだった。


『俺にはどうしようもない マゼンダが理由とか話してくれたらいいのに。』


いつもこれが結論だった。


俺はため息をついて冷蔵庫に牛乳をしまった。


「・・・あのさ、マゼンダ」

「んー?」


マゼンダがぼんやりとしながら返事をする。


俺が口を開くのと、ドアが勢いよく開くのはほとんど同時だった。


つまり


俺とマゼンダ以外の奴が家に入ってきたってこと。



「お前!!」

「・・・ブロント?」


まだぼんやりとした表情のまま、マゼンダが狼の名前をつぶやく。


前のような震えもなかった。


ブロントは、俺とマゼンダを交互に見て走り出した。


マゼンダに向かって。


「マ・・・ッ」



名前を呼ぶ前に



名前の持ち主は消えた。



狼がマゼンダの腕をつかんだ瞬間、部屋中が光に包まれた。



目を開けると、そこにはマゼンダも狼もいなかった。




マゼンダから奪ったずきんもマゼンダが着替えてて洗濯し終わったワンピースも。



何もかも 消えていた。






初めから存在していなかったみたいに。






******************************************


ブロントが入ってきた瞬間 私は前みたいに怯えなかった。



どうしてだろう



前みたいに体が勝手に震えるみたいなことが全然なかったんだ。



ブロントがどうしようとしてるのかわかった。



だけど私が逃げる前にブロントは私の腕をつかんだ。




逃げる前じゃない



逃げようなんて考えなかった。



逃げようとしなかった。



逃げなかった。




「どうして・・・急に入ってきたの?」

「じゃあ、あのままアイツのところにいたかったのか?」

「・・・・・・」

「・・・俺じゃないけど、アイツでもなかったんじゃないの?」



ブロントの言いたいことはちゃんとわかった。


だけど私は答えなかった。



ブロントは私に背を向けて歩き出した。



真っ白の世界で 私に姿が見えなくなるまで。




どうして私 どこにいても1人なの?



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