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第31話 子供のルール

不意に、子供の頃を思い出した。


今でも俺は若造なんだろうけど、強いて言うなら学生の頃。


あの頃は恋愛がすべてだった気がする。


誰が好きとか、誰と誰がつきあってるとか、誰が誰に告白してふられただとか。


そういう話題が大好きな奴が多くて、俺もよくその中で笑ってた。



そういう話題が好きなくせにそいつのこと『調子に乗ってる』とか『生意気』とか言う奴も少なくなかった。


子供には『グループ』があった。


大人にだって派閥とかあるんだろうけど。


グループの中で1人彼女が出来るとソイツを避けたがった。


好きな子がいる の時点では面白がってからかうくせに、いざくっついてしまうと『生意気』と言い出すんだ。


子供には子供のルールがあった。


大人には理解できないかもしれない 子供だけの、誰が決めたわけでもないルールが。


俺もそれを知らないうちにでも守っていたし、守っていない奴を避けたりしていた。


別に避けなくったって何もなかったのに。



今思えばそれは、みんな気づいていなかったり気づいていたとしても認めたがらなかっただけで


その中には確かに『嫉妬』とか『ひがみ』が含まれていた。



だけどあの頃の俺達の世界はそれを中心に回っていて、それがすべてで


どこか憧れていた気がする。


別に身近じゃない 遠いどこかの物語でもないのに。



そんな年頃なのに、兄貴に好きな女をとられてばかりじゃ俺だって根暗にでもなるさ。


実際、俺は高校生の時結構暗いほうだった。


本を読むのが好きで、図書館に篭るのが好きで。


お気に入りの作家がいてその人の本を読み漁って。


休憩時間は本を読んでて昼休憩は図書室にいて。



特別誰かと仲良くしたりしない。


そんなの中学生まででじゅうぶんだった。


もううんざりしていたのかもしれない。


子供のルールがもう嫌だったのかもしれない。


女子に『暗い』とか『話しかけ辛い』とか


そういうことを言われてる奴と同類だったかもしれない。



だけどあの頃の俺の中心は、恋でも まさか勉強でも 当然友情でもなく、本だった。


本がすべてだった。


なんて高校生だろう と今は思える。



いろんな本


図書館の本棚に詰まれた本達


俺の胸をときめかすのは本だけだった。


他のものは所詮『他のもの』だった。



まぁ、俺の世界を含む『世の中』というものはその『他のもの』を中心に回っていたのかもしれないけど。



友情物 論文物 恋愛物


なんだってよかった。


俺に苦手な本はなかった。


どんな本もそれぞれ違うものを持っていて。


そんなところも俺の胸をときめかすんだ。



本物の友情より 本物の恋愛より


本の中の友情と恋愛のほうが俺には純粋に見えた。


子供のルールなんておかまいなしな、純粋な友情と恋愛。






俺は電話を切ると、マゼンダのほうを見てため息をついた。



だけど今なら言い切れるんだ。




本を読んでいるだけじゃわからないときめきがこの世にはたくさんあるんだ。





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