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第30話 リンさんの退職

「もしもし!?」

「あ、もしもし〜ブルース君?どうしたの?」

「退職するってどういうことですか!なんでルファが俺の担当に・・・」


俺が頭を抱えると、電話の向こうからリンさんの笑い声が聞こえる。


その向こうでクロウの声も聞こえた。


「いやー実はさ、結婚することになっちゃって。」

「・・・・・・は?」


ケッコン?


「・・・あの・・・おかしなこと聞きますけど・・・相手って・・・」

「やだー!クロウに決まってるじゃない!」


結婚!?クロウが!?リンさんと!?


俺の頭は完璧に忙しくなっていた。


リンさんが退職で?


結婚?誰と?あぁ、クロウとだ


なんでいきなり?


「なんで突然・・・」

「あーもしもし?電話変わったんだけど。」

「クロウ!どういうことだよ!」

「どういうことって・・・そういうこと?」


話にならん!と心の中で悪態をつき、俺はため息をついた。


「なんで急に結婚なんて・・・困る!」

「へぇ、困るって何が?」

「急に担当が変わるなんて・・・しかもルファだろ!?」


俺にとって担当ってのはかなり相性のいい人じゃないといけない。


だって俺の将来とか今度の生活に関わるわけだし、仕事絡みとはいえ結構会わなくちゃいけない。


そういう意味ではリンさんと俺は相性はよかったと思う。


お互い仕事の文句も言い合えたし、小説に関係ない話だってできた。


ルファが同じだとは限らないじゃないか。


「いいじゃん。同級生なんだからタメ口だし。話が尽きなくていいじゃん!」

「そういう問題じゃない!」

「まぁまぁ。しょうがないんだってーしばらくリン、仕事できないから。」

「はぁ?なんで・・・」


電話の向こうでリンさんの笑い声が聞こえる。


どうやらテレビを見ているらしく、急にテレビの音が聞こえた。


クロウかリンさんが音量を上げたんだろう。


「リンが外国に行かなくちゃいけなくなったんだ」


俺が何か言おうとした瞬間、テレビの音が聞こえなくなった。


「聞こえた?聞こえてない方が好都合なんだけど」


クロウの言葉に、俺は電話の向こうにも聞こえるように大きくため息をついた。


「聞こえたよ。悪かったな」

「なんだ、聞こえたんだ。」

「で、なんで?」

「んー、ここから先は少し格好悪い話になるんだよなぁ」


クロウの言葉を無視して、俺は黙ってクロウが話し始めるのを待った。


するとクロウのため息が聞こえた。


「リンって、元々アメリカで生活したいって思ってたの。乙女の夢なんだってさ」

「へぇ、理解できないな」


アメリカに行くのが乙女の夢?


どこが乙女的で何が夢なんだかわかんないな。


「で、俺としては行かせてあげたいわけ。そしたらこないだ向こうでの仕事先が見つかって、家も借りれることになった。」

「へぇ で?それと結婚とどういう関係があんの?」

「だって、結婚しないと駄目だろ」


だから、何が駄目なのかを聞きたいんだ俺は!!


「アメリカだぞ?考えてみろよー!どうやって連絡取れっての?国際電話なんて金の心配がさー」

「いや、お前もアメリカ行けば?」

「さらっと簡単に言うけど、バイト生活の俺にそんな金あると思う?向こうでの仕事はどうすんの。」


俺は思わず苦笑してしまった。


そういえばそうだったな。


「ってなると俺は日本、リンはアメリカになるの。でも、これから先ずっとそんなに離れてたら何もかも離れちゃうじゃん」


俺には、リンさんよりもクロウのほうがよっぽど乙女っぽいように思えた。


リンさんの『アメリカに行きたい!』という夢よりも、今のクロウの乙女的発言のほうがよっぽど乙女だよな。


「だったら結婚して縛り付けとけばいいかなって。」

「お前、結婚は縄かよ!」


俺のツッコミは無視された。


「とにかく、俺はこれからもっとバイト頑張って!資格取って、英会話やってアメリカに行く!」


見えないのに、クロウが強く拳を握り締めたような気がした。


俺は小さく噴出した。




みんな必死だな。



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