第27話 天才と凡人と努力
「なんでそんないい加減なこと言うの?」
また空気の読めない女が喋り始める。
ティンクが『誰?』と言いたげな目でマゼンダを見る。
それでもマゼンダは黙らない。
俺も、黙らせなかった。
「天才じゃなかったら努力しちゃいけないの?努力もしちゃいけないの?」
「・・・貴方誰?」
「努力ができるのに、しちゃいけないなんておかしいよ!」
マゼンダのいた世界は『努力』なんて通用する世界じゃなかった
努力したってしょうがないし、それどころか努力のしようがない世界
「・・・彼女?」
ティンクが、俺のほうを見て言う。
「違う!」
俺が言うと、ティンクはまた楽しそうに笑った。
その笑みにまたイラついた頃、レジが終わった。
俺はカゴを持って机の上へカゴを置くと、袋の中に詰める作業を始めた。
「戻ってきたいなら戻ってくればいいよ!」
「・・・は?」
「また、壁を思い出せばいいよ」
ティンクは楽しそうに笑って、マゼンダの肩をたたいた。
「いいこと教えてあげる」
「え?」
「この子ね、100回以上お兄さんとテニスで戦って、1度だって勝てなかったの、1ポイントも取れなかったの」
ティンクはそれだけ言うと、俺達を置いて買い物を始めた。
俺はティンクの背中を睨みつけた。
マゼンダはただティンクを不思議そうに見つめていた。
アイツは俺を挑発してテニスを始めさせて、俺をいじって楽しむつもりだ。
俺の敗戦記録を伸ばそうとしてるんだ。
ティンクの挑発になんかのってたまるか。
あんな奴、目の毒社会の毒 だ。