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第26話 ブルースとテニスとティンク

「そうかそうか 仲良くお買い物か!」


俺の腰から手を離したクロウがわざとらしく言う。


「いや、兄妹仲良くしてるのはいいことだと思うよ!うん!」

「あー・・・うるさ・・・」

「それにしてもクロウとブルース君が友達とはねー!」


リンさんが睨みあう俺とクロウを交互に見ながら言う。


こんな表情の2人でも『友達』と思うリンさんってある意味凄いかもしれない。


「じゃ、お邪魔かと思いますんで俺とマゼンダはレジへ行きますー」

「いやー!邪魔なんて!」


クロウはそういいながら今度は俺の足を思い切り踏む。


なんで俺がこんな立場にならなくちゃいけないんだ!!


「ねぇ、これ誰?」


場の空気を読めない女が1人いた。


マゼンダが棚にぶら下がったポスターを指差す。


そこにはテニスウェアと着て、ラケットを持ってなにやらポーズを決めた漫画っぽい男の子が書かれていた。


「あぁ、テニス漫画の主人公だね。」

「てにすって・・・」


マゼンダが俺のほうを見る。


「あ!ブルースって昔やってたんだろ?テニス!」

「あー、私知ってる!お兄さんが県で1番とかで・・・」


そこまで言って、クロウがリンさんの腕を自分の腕でつつく。


『禁句だ』と言いたげだった。


どうしてそういうのを俺の見えないところでしないんだろう?


「も、もうしないのか?」

「しない」


冷たく言うと、クロウが顔を引きつらせる。


リンさんは目を泳がせ始める。


言いだしっぺなマゼンダは俺達3人を何度も順番に見ていた。


「あ、そ、そういえば!うちの編集部の男の人でテニスクラブやってる人いるわよ!」

「へー!それに行けばいいじゃん!」

「誰が行くか!」


俺はすっかり不機嫌になった。


「マゼンダ、帰ろう」

「え?」


俺はマゼンダ達を置いてレジへ急ぐ。


どうして俺がこんなにイライラしなきゃいけないんだ!


なんで気を使われなきゃいけない!?


どうしていまさらテニスなんてしなきゃいけないんだ!


どうせまた兄貴の話になるだけなんだ!


「どうして?すればいいじゃん!テニス!」

「・・・したくない」

「なんで?だってブルース、まだテニスが好きだって・・・」

「言ったけど!」


少し大きな声で言って、同時にレジにカゴを置く。


レジのパートっぽいおばさんは何事もなかったように商品をレジに通す。


「それとこれとは別なんだ」



テニスが嫌いなわけじゃない


むしろ好きだ


できることならまたやりたい


だけど



「ブルース、またテニスするの?」




まただ


どうして今日は会いたくない人間に会うんだ!!


また聞き覚えのある人間の声に振り返ると、そこには誰もいなかった。


が、このパターンを思い出し視線を下に向けると


いた。


「久しぶりだね〜」


そこには、ティンクがいた。



俺の1つ上年上で、兄貴の彼女。


今どうか知らないけど、俺が兄貴とまだ一緒にいた頃は彼女だった。


「ふぅん テニス、するんだ」


いつから聞いていたのか、ティンクは意地悪く笑った。


本当に性格が悪い。


顔が可愛いのは俺だって認めるが、どうして兄貴はこんな性悪を選んだのか。


これなら他の奴等のほうがよっぽどいいのに。


「馬鹿ねぇ アンタのお兄さんに勝てるわけないじゃん」

「するなんて言ってねぇよ!」

「へぇ?私には『したい』って言ってるように見えたけど」


思い切りティンクを睨みつける、


が、ティンクは全然びびったりしない。


むしろ楽しそうに口の端を持ち上げる。


この笑みがイラつくんだ。


「アンタは天才じゃないんだから」

「・・・それ、何度も昔聞いた」

「天才じゃないアンタが努力したってね、天才には勝てないの。」


ティンクは、さも楽しそうに笑って言う。


昔から何度も言われた。


俺は天才じゃない


兄貴は天才だけど。


凡人はどんなに努力したって天才には勝てない。


そんなのわかってる



兄貴にできないことはない





俺が兄貴に勝てるところなんて 1つもない


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