第25話 再びスーパー
本棚のほうを向いた後、思い出す。
「あ」
「へ?何?」
「・・・スーパー行ったのに、結局何も買ってねぇ」
俺が言うと、マゼンダも思い出したらしく笑い出した。
そうだった 狼に邪魔されたから・・・
「じゃ、買いに行くから留守番してて。何もいじるなよ!本は読んでもいいけど・・・」
「いや!」
言い終わらないうちに、マゼンダがきっぱりと言う。
「私も買いに行く!留守番なんてやだ!」
俺は思わず笑ってしまった。
子供か?こいつは。
そんなにいい世界じゃないのに。
「・・・お前の場合、悪いところ知らないからか。」
「え?」
ただ 自由な世界って思ってるのか。
「いやいや、なんでもない。じゃあ行くか」
ため息をついて立ち上がり、家を出る。
マゼンダも慌てて靴を履いて出てくる。
スーパーに着くと人は少なかった。
近くにもっと大きなスーパーがあるから、そっちに流れているんだろう。
こっちのほうが安いけど、向こうの方が品揃えがいい。
ま、俺の基準は質より値段だからな。
「さすがに腹減ったな」
「はらへった?」
「あー、なんて説明すればいいかな。何か食べたいって思うんだよ。腹に何か違和感があんの。」
腹のほうを指差して言うと、マゼンダは眉間にしわを寄せた。
理解できないらしい。
そりゃ腹が減らないんだから理解できないよな。
「まぁ、マゼンダの腹のほうが経済的だけどな」
そう言って笑うと、マゼンダはますます眉間にしわを寄せる。
「何食べたいかなー」
大きな棚には大きく赤い数字がいくつも書かれていた。
普段と値段変わらないくせに。
俺は生でも食べれるトマトなんかをカゴに入れた。
適当に買っていくと、スーパーを一周した頃にはカゴの中がいっぱいになってた。
「ま、当然荷物運びすんだろ?」
俺が言うと、マゼンダは大きく頷いた。
「よっブルース!」
聞き覚えのある声に、俺はゆっくり振り向いた。
そこにはクロウがいた。
しかも、リンさんと一緒にいる。
「あら、ブルース君!」
「・・・さっきの人?」
マゼンダがリンさんを指さす。
リンさんがきょとんとした表情で俺とマゼンダを見比べる。
あぁ、声でわかったのか。
リンさんがきょとんとするのはしょうがない。実際に会ってないんだから。
「えっと・・・この子は誰?」
「あー・・・」
説明に困っていると、クロウがにっこりと微笑む。
それからリンさんに見えないように素早く俺の腰の皮を強くつまんで言った。
「ブルースの、妹ですよ。」
妹!?
思わずクロウを睨むと、それ以上に怖い目で睨まれる。
「へぇ、妹さん!」
「え?」
「初めましてー!ブルース君の小説の担当をさせてもらってます。リンです」
「え・・・あ!」
どうやら何か誤解が解けたらしく、マゼンダは目を大きく見開いて俺のほうを見た。
そんな目で見られても何を誤解してたのかわからないから困るんだけど。