第23話 暗い世界
それから 狼に会うことはなかった。
次の日の朝 目が覚めるとブルースは床で寝てた。
起き上がって寝顔を見ると、ブルースは寝返りをうって私に背を向けた。
ごめんね ブロント
ブロントのこと嫌いになったわけじゃないよ
だけどね
それ以上に この世界にいたいって思うの
ブルースのいるこの世界にいたいの
だから ごめんね・・・
ブルースに触れようとした瞬間、甲高い音が鳴り響いた。
ピンポーン・・・
ビクッと体を震わす。
同時にブルースのまぶたがピクリと動いた。
ピンポーン・・・
また鳴って、少し遅れてブルースが起き上がった。
私が慌てて離れると、ブルースは私のほうをちらっと見ただけですぐに背を向けて玄関へ向かった。
ほっとしたような、寂しいような。
小さくため息をつくと、ブルースがいつの間にかそばにいて、私の腕をつかんだ。
「やっべ・・・」
小さく言うと、ブルースは私を押入れの中へ入れた。
「・・・へ?」
「ごめん!しばらくここにいてくれ!!」
ブルースはそれだけ言うと押入れを閉めた。
中は暗くて、少し怖かった。
ガチャッ
ドアの開く音がした。
「どうもー毎度ーリンさんですよー!」
「・・・どーも」
女の人・・・?
ドクン、と 心臓が重たくなった。
「メールで原稿受け取ったから読んであげたけどさー」
「読んであげたってなんスか・・・」
「アハハッ ま、いんじゃない?面白かったよ。売れるんじゃない?」
何の話 してるんだろう・・・
私には全然わからない。
なんだか聞きたくなくなって、私は戸に耳を押し付けるのをやめた。
しばらくすると、押入れが開いた。
「悪い、マゼンダ・・・その・・・出かけなくちゃいけなくなったからさ。留守番してて?」
「え・・・」
「たぶん、すぐ戻るから」
ブルースはそういうと、また押入れを閉めた。
慌しくドアを閉める音が聞こえた。
暗い世界に取り残される
何もない私だけ 1人きりで。