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第2話 童話の世界

目が覚めるとそこはいつも通り何もない真っ白な世界だった。


が 急に狼の顔が現れた。


「大丈夫か?」

「大丈夫に決まってんでしょ!」


そう言って思い切り頭突きをすると狼はみっともない声をあげておでこをおさえた。


私はバカにしたように鼻で笑った。


「ぃてぇぇぇ・・・」

「痛くない!」


どうして私はこんなところにいるんだろう


話し相手は狼ぐらいしかいないし


いつだって私は赤ずきんだし


いつもいつも同じ展開だし


私は泣きたくなってきて、体操座りをした。



そう 私は童話の世界の中にいる


絵本の『赤ずきん』の世界の中にいる


どうしているのかわからない


気がついたらここにいて 赤ずきんを演じてた。


誰かが本を開くと周りは森になる


それまでは真っ白で私達しかいない無の世界なのに。



何度も逃げ出そうと思った


『おばあさんの小屋』なんかに構わず 森を走ろうって



でもできなかった



いつだって物語が始まれば体がいうことを聞いてくれなくなる


勝手に体が赤ずきんになって動き出す。


「赤ずきん?どうした?」

「どうもしない!」


私はそう言って立ち上がる。


「・・・なぁ」


狼が私の背中に向かって言う。


「どうして俺はブロントで、お前は赤ずきんなんだ?」

「そんなの 知らない」



私に人間のような名前はない


でも狼には『ブロント』という名前があった


私は赤ずきん


名前なんてない


だって名づけられてないもの


(ブロント)は誰かが名づけたみたいだけど・・・


どうしてなのかはわからない


でも 知りたくない



知ったら 私はここの世界の住人じゃないってことになりそうで



そうしたら 私はどこにいればいいのかわからなくなるから



よくわからないけど そんな気がする



「お前はあの話、まだ信じてるのか?」


(ブロント)がまた私の背中に向かって話しかける。


返事なんて 誰かが絵本を開けばかき消されてしまうのに


「さあね。でも、信じてても信じてなくてもどうにもなんないよ」


私が返事をして(ブロント)のほうを振り返ると、(ブロント)は眉間にしわを寄せて私を見ていた。


私はまた馬鹿にしたように鼻で笑った。



信じてたって信じてなくったって



自分がどうしたって変われないんだよ?



それなら どっちだっていいじゃん




信じてたら変わるならいくらだって信じるよ


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