第19話 夜
マゼンダの長い入浴時間が終わり、その後で俺が入った。
思ってたより風呂場は綺麗なままで、俺は思わず笑ってしまった。
俺が風呂を出る頃にはもう9時をまわっていた。
「今日は疲れただろうし、もう寝ていいぞ?俺は仕事しとくから」
そう言ってパソコンの前に座るとマゼンダは小さく頷いて布団の中にもぐった。
が、すぐに上半身を起こして俺のほうを向く。
「ブルース、布団は?」
「・・・あ〜、まぁ、どうにかする」
この家には当然ながら布団が1組しかない。
だって俺1人暮らしだし。
「じゃあ私、いいよ!風邪なんてひかないだろうし!」
「はぁ!?いいって!!なんでマゼンダが床に寝て俺が布団なんだよ!おかしいだろ!」
「え、でも・・・」
「いいから!!寝てろよ!!!」
思わずイラッとして怒鳴ると、マゼンダは眉間にしわを寄せた。
それは怒ったりしてる表情じゃなく、悲しんでるような表情で俺の胸を痛めた。
「・・・寝る」
マゼンダはそういうと俺に背を向けて布団にもぐった。
俺はため息をついてパソコンに向かった。
カチャカチャ・・・カチッ!!
以前からやっていたファンタジー小説。
ようやくラストが決まり、俺はメールで担当の編集者に原稿を送りつけた。
パソコンの電源を切り、ふと布団のほうを見るとマゼンダが幸せそうに寝息をたてていた。
時計は12時を指していた。
空を見ると満月と星達が必死に自己主張をしていた。