第16話 カメラ機能
携帯の使い方の説明をしてもマゼンダはいまいち理解してそうになかった。
まぁ、使ってるうちに慣れるだろう いや、慣れろ!!
俺は心の中で叫んだ。
まぁ、もう必要なものはないだろうな。
そう思い、『帰ろう』とマゼンダに言おうとしてマゼンダの方を向いた瞬間。
パシャッ!
携帯のカメラの不自然な機械音が聞こえた。
驚いてマゼンダのほうを見るとマゼンダの手には携帯があった。
その携帯は『カメラモード』になっていて、俺のほうに向けられていた。
「な・・・っ」
眉間にしわを寄せる俺とは対照的に、マゼンダは嬉しそうに笑った。
「えへへ」
「えへへじゃねぇ!何撮ってんだ!消せよ!」
小さい頃から写真を撮られるのが大嫌いだった。
「いいでしょ?別に。」
マゼンダは偉そうに言うと携帯を閉じた。
俺はため息をつくと携帯を開いた。
初めて持つ携帯を興味津々に眺めているマゼンダに携帯を向ける。
パシャッ!
さっきのマゼンダの携帯と同じような音が響く。
マゼンダが大きく目を見開く。
「ちょ、自分も撮ってるじゃん!」
「お返しだよ」
俺が満足気に笑って言うと、マゼンダは頬をふくらませた。
「いいもん。さっきの絶対に消してあげない!永久保存!」
「じゃあ俺も絶対消さない。永久保存してやるよ」
マゼンダはチラリと俺のほうを睨んだ。
俺がへらっと笑うとマゼンダも笑った。
あぁ、今はこれでいいや
一生とか 先のことなんて 今はいい。
あんまり考えたくない
マゼンダの将来とか
マゼンダのいない俺の未来とか。