第13話 クロウと買い物2
ふと後ろを歩いているはずのマゼンダのほうを見ると目が合った。
そういえばさっきからマゼンダにはついていけない会話だった。
俺はマゼンダの腕をつかんでひっぱった。
「!」
驚いた表情のマゼンダを見て思わず笑うとマゼンダは嬉しそうに笑った。
こういうのが妹を見るシスコン兄みたいなんだろうか・・・
いや、マゼンダは妹じゃないし俺はシスコンとかじゃないし・・・
ごちゃごちゃ考えているとクロウに頭をたたかれる。
「今、どっか飛んでたぞ?」
「や・・・大丈夫だ」
「ここなんてどうよ?」
クロウが足を止めて指差した店は俺には当然、まったく縁のない世界だった。
フリルだとかスカートだとか・・・
彼女が多いとはいえよくもまぁこういう店を覚えてるもんだ・・・
「・・・可愛い」
マゼンダは小さくつぶやく。
その瞳はきらきら輝いていて、凄く可愛かった。
「気に入った?ならよかったー」
俺はそっと、そばにある服の値札を見る。
Tシャツが1550円・・・
別にいいか・・・こんなもんだよな・・・
「これ可愛い・・・」
マゼンダが触れたのはチェックのワンピースだった。
明るい茶色のギンガムチェック。
あぁ、なんか似合いそうな・・・
「あー、それ少し丈短いからさ〜・・・これとか下にはいたら可愛いよ」
クロウはまるで店の定員のようだった。
どこからか黒くて足元がレースになっているスパッツを持ってきてマゼンダに渡す。
「・・・可愛い」
マゼンダはそういった後、ちらりと俺のほうを見た。
「いいよ。買ってやるよ」
俺が言うとマゼンダはぱぁっと明るく嬉しそうな顔をした。
まったく そんな顔するんならなんだって買ってやるよ・・・
ぼんやりとそんなことを考えた後首をふる。
いやいや!!本当にシスコンな兄貴になってどうする俺は!!
「これとか似合いそうだねー」
服を選んだりはクロウに任せることにして、俺は2人を眺めていた。
なんとなくお似合いなんだよな この2人。
そういえば俺といるよりクロウといるほうが楽なんじゃないかな女物の服とかわかるんだし。
そんなことを考えているとマゼンダが俺の腕をつかむ。
「ん?」
「これ、似合う?」
マゼンダは白くてふわふわしたブラウスを俺に見せる。
「あ〜・・・」
そんなのわかんないって!
返事に迷うとクロウが苦笑する。
「あれだよ デニムのスカートかズボン買ってやれよ。それならブリッコっぽくないし」
「でにむ?」
「ああいうのだよ。」
クロウはデニムのスカートを指差す。
あぁ、やっぱりクロウのがわかるんだなぁ
かといって、いまさらどうしたってあんな風にはなれないし・・・
結局俺はマゼンダの服を数着買ってやった。
よかった・・・財布の中多めに入れておいて。
まぁ、当分こんな買い物しないよな
「・・・疲れた」
俺の手首をつかんだマゼンダが小さく言う。
「慣れないところだもんな。向こうのベンチで休んでろよ」
そう言ってベンチを指差すとマゼンダは小さく頷いてふらふらとベンチへ向かう。
「じゃあブルース、ちょっと遊ぼう!」
「いや、面倒なことはしないぞ・・・」
ちらりとマゼンダのほうを見るとじっとこちらを見つめていた。
「じゃあマゼンダ、俺達ちょっと向こうに行くけどすぐに戻ってくるから。何かあったらすぐに人の多いところへ行けよ」
そういうとマゼンダはまた小さく頷く。
それを確認すると俺とクロウは本屋のほうへ向かった。
クロウは一般書の中にある俺の書いた本を見つけるとぱらぱらとページをめくりだす。
「・・・よく本人の前で読めるな」
「本人の前だから、だろ。よくこんなの書けるよなー」
クロウがそういった時、誰かが俺の首をつかんだ。
驚いた俺をクロウが驚いた表情で見ている。
「どーも」
耳元で聞き覚えのある声がした。
マゼンダと同じようなにおいの男。
狼しかいない。
「・・・こんなところまでついてくるのか?」
「俺はどこへだって来るよ」
「誰?」
「・・・ごめんクロウ、ちょっと聞かれたくない話させられるらしい」
俺が言うとクロウはちらりと狼のほうを見た。
それから小さく頷くとどこかへ行ってしまった。
「・・・手を離せ。」
俺が言うと狼は素直に俺の首から手を離した。
小さく咳き込んでそちらを見る。
「なんなんだ・・・俺に用でもあるのか?」
「1つ、聞きたいことがあるんだ」
「ん?」
狼はじっと俺の目を見る。
俺も逸らさずに見てやる。
「アンタは赤ずきんが好きなのか?」
「・・・好きって、恋愛感情?」
「決まってんだろ!」
「いや、恋愛感情は・・・ない・・・・と思う」
そうか そんなこと考えてなかった
兄が妹を思うような感情と思っていたけど、まさか・・・
「・・・思うってのが怪しいけど、まぁいいや。だったら質問変えるよ。あんたは赤ずきんを一生大事にできるか?」
「は?」
「アイツはあの世界に帰りたくないだったらあんたのそばにいるしかない。あんたはそれでいいのか?
好きでもない女とずっと一緒にいれるか?」