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第10話 クロウさん

「責任も何も・・・」


ブルースが言いかけたところで母親はにこやかに手をふって人ごみに紛れた。


「ったく・・・」

「明るいお母さんだったね」

「は?あんなの・・・」



凄く明るかった



あの世界にいた人だなんて思えない






あの世界のこわさを忘れてしまったんだ




あの世界は何もしてこない



だけど凄くこわかった



いつもこわかった



私達を縛ってたから




見えない鎖を体中に巻きつけてたから



「・・・赤ずきん?」



気がつけば私の体は小刻みに震えていた。



戻りたくない



あの世界に戻りたくない




「ブルース・・・お願いだから・・・私のこと追い出したりしないでね・・・」

「え?」

「嫌なの・・・もう戻りたくないの・・・」


お願いだから



もう戻りたくないから



「・・・追い出すつもりなんてねぇよ。俺がお前のこと呼んだようなもんだし・・・」

「・・・うん」

「お前・・・大丈夫か?」

「・・・・・・・・・うん」



ブルースがいるなら大丈夫だよ



ブルースから離れたくない



絶対に離れたくない




「え・・・えーと、最初は薬局だな!うん!あれだ!シャンプーとリンスとボディソープ買わなきゃ!」


ブルースは慌てたように言うと私の腕をひっぱった。


大人しくついていくといろんな箱や筒や袋のあるお店に着いた。


「女物のシャンプーとかわかんねぇから選べよ。」

「・・・しゃんぷーって 何?」

「・・・は?」


私が聞くと、ブルースは口をぽかんと開けた。


「もしかしてお前、風呂とかはいらない?」

「うん。」

「うっわー・・・嘘だろ・・・でも臭くないしなー」


ブルースはそういうと綺麗に並べられた色とりどりの物の中か3つ選ぶと私の腕をつかんでまた歩き出す。


「いいや 適当に買っとこ!」

「え・・・でも今までしなくて平気だったんだからいいのに。」

「いいんだよ!まぁ、お前の場合お買い物システムも知らないんだろうな」

「おかいものしすてむ?」


私が言うとブルースは苦笑する。


「発音違うし・・・買い物する時は、金払わなきゃいけないってこと。ま、買い物の時は俺が行くから知らなくていっか」


ブルースはそういうと大きな灰色の机の前に立っている男の人にさっきの物を渡した。


ふと、男の人がブルースをじっと見つめる。


私のほうを見ていたブルースがそれに気づき、男を睨みつける。


「何ですか?」

「・・・お前、もしかしてブルース?」

「あ?」


男はブルースの両肩をつかむと大声で言う。


「ブルースじゃん!俺だよ!クロウ!中学で仲良かったじゃん!」

「あー、クロウか!でかくて気づかなかった」


友達かな?


なんとなく疎外感を感じて、私は2人から少し離れた。


「何あれ、彼女?って・・・もしかして結婚とかしてる?」


クロウとかいう男の人はブルースが渡した物を見て眉間にしわを寄せる。


「違う!!ちょっとわけがあって一緒に住むことになって・・・」

「えー!あんな可愛い子と!?」

「ま、まぁ・・・」

「いいなぁ〜いいなぁ〜」

「アホ どうせお前も女癖なおってねぇんだろ?」


なんか、仲よさそうだなぁ・・・


何のこと話してるのかよくわからないのが残念。


ぼんやりと2人を眺めているとクロウさんが私のほうを見てにこっと微笑む。


私が頭を下げるとブルースのほうを見てニヤニヤ笑いだす。


「彼女じゃないなら俺に紹介してよ」

「ばぁか お前、今彼女何人いんだよ」

「んー?こないだ相当きったから3人ぐらいじゃねぇかな」

「・・・相変わらずだな」

「モテる男は苦労するのです☆」


クロウさんはにこやかに言うとブルースの渡した物を袋に入れてまた渡す。


「久しぶりに会った親友だからな。お金はいらないよ!俺が払っとく」

「え、いいのか?助かるけど・・・」

「うん。で、あの子名前は?」

「ばぁか!」


ブルースは少し大きな声で言うと私のほうへ戻ってくる。


そしてさっき渡されていた袋を私に持たせた。


「コイツには手、出させねぇよ!」


ブルースはクロウさんにそういい捨てると私の腕をまたつかんでぐいぐいひっぱった。


「ねぇ、さっきの人って・・・」

「クロウっつって俺の中学の時の友達!すっごい女好きだから近寄るな!あ、近寄らせねぇけどな!」

「女好き?」

「そ。女でそこそこ可愛ければ誰とでもつきあえんの。危ないの。」


ブルースは小さい子に言い聞かせるように言う。



そこそこ可愛ければ?



誰とでも?




つきあえる?




危ない?






私の頭は『おかいものしすてむ』と『クロウさん』で混乱していた。


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