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涙と雨の香り
どれほど走っただろうか。
振り続ける雨が、したりしたりと制服を濡らしていく。
涙で霞んだ狭い視野には、ただ無愛想に並ぶ電柱とアスファルトがこちらをじっと見つめていた。居た堪れなくなって、ずっとずっと心臓が張り裂けそうなほどに在る道を走った。
私はただ無闇に走り続け、気づいた頃にはローファーの中まで雨が侵食していた。
いつの間にか人気の少ないところに来ていた。家への道もわからなくなり、重たい体と心を弄びながら丁度良い雨宿りのできる場所は無いかと辺りを見回すと、斜め前の方向にちっぽけな喫茶店が見えた。
この際だ、なにか甘いものでも食べて鬱な心を晴らそう。
そう考えた時には、喫茶店の扉のベルが可愛らしく音を立てていた。