涙の初恋
初心者である私の、処女作となります。
不定期に更新していきます。
飽きずに読んでくだされば幸いです。
私、蕪木 結衣の初恋は本日で無念に終わった。
梅雨独特のじめりとした空気が、心身ともに重い我が身に絡みつく。
初めて、自分の醜い気持ちを知った。
私の初恋は、ごく自然に芽生えた。
自分の所属する美術部の部室として使われている湿った美術室の窓から、彼を見つけたのがきっかけだった。
私は今まで、これといって好きになった異性がいない。
と言うのも、自分の性格が世の中で言う"つまらないもの"だと言うこともしっかりと分かっていたし、分かった上で誰かに媚びようという考えなどは、常に脳内からフレームアウトしていた。
もちろん、仲の良い友達などおらず、小・中・今までで喋ったことのある同世代など、両手で数えられる程だ。
私は自分から誰かに話しかけようともしなかったし、周りも私に話しかけようとはしなかった。
きっと、好きな人など出来ないんだ。と幼いながらに感じていた。
その、私が高校二年生になってようやく初恋というものを知った。
二年生に上がってから、周りの女子生徒が一斉にスカートの丈を短くし始めたのを横目に、私は美術室へと向かっていた。
その時はまだ、申し訳程度に桜の花が残っていて、それでも4月は虚しさだけを残して去っていこうとしていた。
私はいつものように、窓際の席に腰かけカンバスを立てかけて油絵具をそれに半ば押し付けるようにしていた。
私が描く絵は、いつも暗くなる。
もちろん、明るくしようと意識してはいるのだが気がつくとカンバスは寒色系に染まっている。
今回の絵もまた、そうなるのかと溜息をつき何気なく窓の向こうに視線をやった。
その時、私の視線はある1人の男子生徒に釘付けになった。
青いユニフォームを身に纏い、まるで我が半身かのようにサッカーボールを操る男子生徒は、自分と同じクラスの人だった。
その真っ直ぐかつ、何処か鋭さを持った姿勢に思わず見惚れていた。
その時私は、今まで喋ったことも無い人に、一瞬で恋に落ちた。
暫く彼を見ていると、彼がふとこちらを向いた。慌ててまだ白いカンバスに向き合うと、自分の心臓がドクドクと今までに無い程に脈打っているのが分かった。
筆を持つ手は小刻みに震え、頬と耳は自分でも分かるくらいに熱くなっていた。
そして私は気が付く。
『これが恋なのだ』と。