第8話
「・・・・以上が今回の決議案になりますが、皆さまいかがですかな?」
「う~む・・・。それは難しい問題だ・・・」
でっぷりとしたおじ様方が頭を抱えて考え込んでいた。
「・・・・王子。王子はどのようにお考えですかな?」
またもや、先程のおじさんが王子に振ってきた。
「おっと。すみません。王子には少し難しかったですかな?こちらは我々の決定に従って頂いて宜しいですな」
なんともいやらしい顔でにやりと笑い席についた。
確か、先程キアンが『宰相』と言っていた。
という事は、王族の次くらいに偉い立場なのだろう。
それなのにこんなくだらない事をしてるとは・・・・。
私は、周りを見渡し溜息をついた。
キアンはキアンで何がどう問題かもわからない事に何とも言えない様子だった。
全くくだらない・・・。
「・・・皆様、少しよろしいでしょうか?」
「・・・・はて?ユキノ様でしたかな?何か?・・・・お手洗いでしたらこの部屋を出てつきあたりですぞ?」
やはり宰相が口を出した。
その答えに周りの者も笑っている。
「・・・・まぁ、聞いてもいない事をわざわざお教え頂きありがとうございます。しかし、今は間に合っておりますわ」
極上の笑顔で答えてやった。
すると、宰相の顔がくしゃりと歪んだ。
「・・・では、何の御用件かな?我々は今大事な会議の途中なのだが?」
はっ!あれが大事な会議とは笑わせる。
「それは失礼致しました。とても大事な会議をなさっている様に見えなかったものですから、ついうっかりまだ遊んでいらっしゃるのかと・・・」
「何!?」
ぎろりとこちらを睨んできた。
「あら?違ったのですか?まさか今のが本当に会議だとでも?机の上に資料も何もない。宰相様以外発言される方もいないのに?大体、この国の王子に対する態度ではございませんわよね?」
こちらも負けずにジロリと睨み返す。
「・・・・何をおっしゃる。王子は施政の事などお分かりにならないから私どもで決定をしているのだ。他の者も反対意見がないからたまたま私一人が喋っている様に見えたのだろう?いくら、陛下の客人といえども口を謹んでもらおう」
まだ、そんな事を言うのか。
「では、誰も資料も見ずに何が問題かおわかりなのですか?一体これはなぜ問題となったのか?誰がどのように困っているのか。そこのあなた様はおわかりですか?」
適当に座っていた小太りの親父を指さし問いかけた。
「えっ!?え・・・と、・・・この問題は、宰相様に一任しておる」
「お答え出来ないのですか?宰相様以外で答えられるものは?」
会場にいた皆が目を泳がせ机とにらめっこをしていた。
「・・・・宰相様はこれが会議だとおっしゃるのですか?会議とは皆が話し合い、意見を出し合いよりよい答えを導き出す場ではありませんか?それが、この通り宰相様以外誰も何も知らないで会議とは・・・・」
バカバカしい。
一人ですべて決めるのならわざわざこんな場を設けるな!と言いたい。
「・・・は!どこの国かもわからぬ小娘が何を知った事を!我が国はこれで成り立っているのだ!他の者は頼りにもならない!それを私が支えているのだ!!おまえにとやかく言われる筋合いはない!!」
宰相は顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていた。
その時、会議室の扉が開いた。