第6話
「用意は出来たか?」
扉の向こうで王子が急かす。
「うぅ・・・結構苦しいものなのね・・・」
でも、初めてにしては上出来だろう。
「・・・・どうですか?」
「・・・・・・・・まぁ、良いのではないか」
その間はなんだ?その間は。
「しかし、うまく行くものだろうか・・・・」
不安そうな王子だ。
「まー大丈夫じゃないですか?そこらへんは王子がうまくごまかしてよね」
「う・・うむ」
どちらかと言うと王子の方が心配だ。
「さっ!とにかく行きましょう!」
王子の腕をとり会議室へと向かった。
その間、王子はまるで王子の様に(実際に王子なのだがそう見えないのでうっかり忘れてしまいそうになる)胸を張って歩いていた。
「ぶっ!なにその偉そうな歩き方は」
王子は眉をしかめる。
「・・・・これでもこの国では父上についで偉いのだが?」
「おぉ!そうだったそうだった。なんか、もう王子なんだけど王子って感じがしなくてね」
「お前は俺を何だと思っているんだ?」
少し怒ったようにこちらを睨んだ。
「王子でしょ?お・う・じ!」
しかし、王子の睨みも私にはまったく通じない。
なんせ、仕事で睨まれる事なんて良くある事だったし。
「・・・・はぁ・・・。お前といるとなんだかすべてがバカバカしく思えてくる」
って、なんだか私が馬鹿みたいじゃないのよ!!
「ちょっと!王子さっきから気になってたんだけど、私の事お前って呼ぶの辞めてくれる?私にもちゃんと西野 夢乃って名前があるんだから!!」
「ん?ニシノ?お前の名前はニシノと言うのか?」
なぜ名字なんだ?
あっ!もしかしてここは英語圏?
「ノンノン!ユメノが名前。ニシノは苗字ね!」
「ほう。お前はユメノと言うのか。変わった名前だな・・・」
口ずさむように何度か私の名前をつぶやいた。
「ユメノ!私はキアン・リーブスだ」
・・・・おしい!!あと一文字あっていれば皆が知ってるあの有名俳優と同じ名前だったのに・・・
「残念だ・・・・」
「何がだ!?人の名前を聞いて残念とはどういう事だ!?」
おっと、また声に出していたらしい
「いやいや、こっちの話よ。よろしくねキアン」
「・・・何か腑に落ちんが・・・・。こちらこそよろしく頼む。では、入るぞ?しっかりそれらしくしろよ?」
「はいはい、解ってますよ!猫を被るのは私の得意技だからまかせてよ」
「・・・・・なぜ、猫をかぶらねばならんのだ・・・・・」
キアンは首をかしげこちらを見ていたが、いちいち説明するのもめんどくさかったのでスルーしておいた。