第1話
言葉は通じない。
見た目がおかしい。
見た事のない場所・・・。
あぁ・・・。読んだことあるよ?こういう話。
「・・・・・・・・!」
美形が私の顔の前で手を翳して何かを言った途端、暗いところに電気をいきなり点けられたような眩しさに目が眩んだ。
「・・・これでいい筈だが・・・」
あ・・・。やっぱり。
じゃぁ何これ?
やっぱり魔法とか使えちゃう系?
「おい!お前。言葉がわかるか?」
「・・・・・はぁ。わかりますよ。王子様?」
「!!曲者か!!近衛!こいつを捕まえろ!!」
えええええええ!!
何よ!セオリーとしてそうだと思ったからそう言っただけなのに!!
なんでイキナリ捕まらなきゃいけないのよ!!!
「ちょ、ちょっと、待って!!怪しいものじゃないから!!」
いや、十分怪しいものだろうけどね・・・。
でも、ここで捕まるのはないでしょう!?
「・・・・・では、なぜ私が王子だと解った?」
あぁ・・・。超怪しんでる目で見られてる。
なぜって言われてもセオリー通りとは言えないし・・・。
「・・・服装からです。他の方とは違う服装をしていたので王子なのかなと・・・」
どうだ?通じるだろうか・・・。
「ふむ・・。なるほど。そう言われればそうだな」
ほぉ。なんか納得してくれたみたいだ。
「・・・なんて言うと思ったか!!そんなもので王子かどうかわかってたまるか!!近衛!連れて行け!!」
やっぱり駄目なのか!!!
っていうか、じゃぁ乗るなよ!
くそう。全然セオリー通りじゃないじゃん。
なんで私の時はセオリー通りにならないんだよぉ!
両脇を抱えあげられガタイのイイ近衛2人に挟まれ連行された。
ぽいっと放り込まれた部屋はご想像通りの牢屋だ。
「・・・マジでありえない・・・。あぁ・・・。早く夢から覚めろ、私!!」
牢屋の壁に額をぶつけてみるが、痛いだけでまったく目が覚めない。
痛い・・・。
あぁ・・・。夢の中の世界じゃないのか?
実際に起こるとかないよね。
絶対ありえないし!!
しかも、パジャマじゃん!!
もっと可愛い格好だったら牢屋に入れられないで済んだ?
いやいや、余計な事言わなきゃ良かったんだよな~。
でもさぁ、実際こうなったら、試しに聞いてみたくなるよね。
「・・・・おい。お前、壁に向かって一人で何をぶつぶつ言っている」
おぉ。こんな暗い場所にはその頭眩しいな・・・。
「無視をするな!私の質問に答えろ!」
「・・・別に無視したわけじゃないけど。独り言位言わせてよ」
こんなところにイキナリ閉じ込められて冷静になる為に独り言位言わせてほしいもんだ。
そうじゃなきゃ、発狂してる。
「壁に向かって独り言とは・・・・。はっ!もしや何か術でもかけていたのではあるまいな!!」
術って、使えるわけないじゃん。
あぁ、でもこういう場所に来たら使えたりするのかな?
貴方はこの世界一の魔力を持ってます!!・・・みたいな?
いや、それでも呪文とか知らないしなぁ・・・。
「おい!だから、私を無視するなと言っているだろう!!」
うるさい王子だな・・・。
「術とか使えるかなんてわかりません!大体、いきなりこんなところに入れられてはいはい言う事なんか聞けるか!」
あまりにうるさい王子にちょっとキレてしまった。
王子は目を丸くして、こちらを見ていた。
ち、そんな珍獣でも見るような顔しなくてもいいだろうに。
まぁ、異世界から来たって言う事は珍獣と変わりないか。
「・・・・私にそのような口をきく奴は初めてだ。」
だからなんだ?
この世界の王子なんて、私には関係ない。
別にココに住んでる訳じゃないんだから。
「ふ。面白い。わかった。とりあえず此処から出してやるが、暴れるなよ」
だから私は猛獣か!?
出してくれるって言うなら暴れるわけない。
とりあえず、ここから出られるならそれでよかった。