第14話
「ん~!!疲れた。こっちは終わったけど、キアンの方はどう?」
凝った肩をたたく時点ですでにおばさんに突入しているだろう。
「うむ・・・。こっちもこれで終わりだ」
目の前にある書類にキアンがポンとハンコを押すとキアンも終わったらしい。
「じゃあ、お茶でも淹れましょうかね。っていうか、もう5種類も飲み物出すの勿体ないんで、何がのみたい?」
まったく、お金持ちはもったいない事をする。
コツコツ経費節減をしろ。
「・・・俺はお茶にしてくれ」
ばたりと机に突っ伏したキアンに返事をし、キッチンに向かった。
「ユキノ!!」
キッチンへ向かう途中に誰かに呼ばれた。
「!!クルーナ殿下・・・・」
ち、ウザイ奴に会ってしまった。
そう思いながら、一応皇太子なので、頭を下げた。
「ユキノ!キアン殿下のお仕事は終わったのかい?」
「あ~。はい、終わりました」
これはお客様だ。
自分にそう言い聞かせ、にっこりと笑う。
「じゃぁ、ユキノのお仕事も終わりだよね?一緒に散歩に行かないか?」
にこにこ胡散臭っ!!
一緒とかありえないし・・・
などと心の声を出さないようにとびきりの笑顔で答えた。
「申し訳ありません、クルーナ殿下。ありがたいお誘いなのですが、私はまだ仕事が残っておりますのでこれで失礼致します」
ってか、あんたとだけは絶対散歩に行かない!!
一体どこに連れ込まれるかわかったもんじゃない。
すっと、クルーナ殿下の横を通りすぎようとしたら、またもや左腕を掴まれた。
今日は左手厄日?
「・・・・なんでしょうか?殿下。離していただけませんか?」
あくまで、笑顔で応対。
「そんなつれない事を云わないでおくれ。私は、一目見たときから君と一緒に過ごしたいと思っていたんだ」
・・・・お断りだ。
「・・・お戯れを・・・。私ごときが殿下とご一緒することはできませんわ」
とっとと腕を離しやがれ!
「そんな冷たい事を云わないで?今の仕事が終わったら、僕の部屋にきてくれるかい?」
そんなにストレートに誘ってくるとは、頭イカれてるのかしら?
どんだけ自意識過剰なんだか・・・。
「・・・仕事が終わりましたら、伺いますわ」
とりあえず、キアンを連れて行こうっと。
「約束だよ?まってるね」
どぁああああ!
またやりやがった!!
せっかくさっき綺麗に洗ったばっかりだったのに・・・・
左手の甲にまたもやクルーナ殿下の唇が触れた。
キッチンに着いたら石鹸で綺麗に洗おう。
「はい。では、しつれいします」
ほぉ・・・。やっと解放してくれた。
さっさとキッチンに行こうといつもより早いスピードで歩いた。
途中振り返ってみるとまだこちらを見て手を振っていた。