現代兵器はRPGでは使えるのか?
かつて神というラスボスがチェーンソーという人間の知恵の産物によって瞬殺されるというRPGがあったけど、
「これ、僕らいらなくね?」
「私も同じ感想を持った……」
ガトリングにバズーカに爆雷に……。ここは本当にファンタジーの世界だろうか。夢もきぼーもありゃしない。
「だがこの子らはアンタらがやすやすと使えるもんじゃねぇ。持ってみな」
リッキーさんに言われて試しに持ってみる。
「って重っ! こんなの扱えないよ!」
あまり力に自信がある方じゃないけど、一応大のオトコである僕で持てなかった。
「うわっ……、なんなのこれっ! 現実世界の数倍の重さよっ!」
姉さんは言わずもがな。
「これでも最低限必要なバーツ使ってんだ。まだまだ軽量化なんて言ってられねぇよ」
どう考えてもオーバーテクノロジーだからな……。それぐらいの制約はあるか。
「アンタらはこっちだ」
そう言ってリッキーさんは僕らをより地下へ誘う。
――
「これだ。持ってきな」
地下に案内したリッキーさんは、僕らに球体を見せる。
「爆弾……ですか?」
「アンタらの世界ではそういうのか? これは俺が極秘に開発したリッキーボールだ」
リッキーボールと呼ばれるそれは、
「これ、モンスターボールだよね? しかもハイパーボール……」
制作者の妙なこだわりがあるのだった。
「これどうするんですか? さっきの殲滅兵器の方が凄そうですが……」
「甘いなアンちゃん。ものの価値はでかさだけじゃねぇ。コイツの真骨頂はそうだな、実際に外に出て確かめてみっか」
どうやら自信があるようだ。
――
『あじゃあじゃあじゃあじゃ!!』
久々登場リキシ。相変わらずの厚化粧だ。
「もちっと強い方が映えるんだが仕方ねぇ。超芸術的爆発を見せてやんよ」
そう言って彼は、
「リッキーボールタイプS!」
大きく振りかぶってそれを全力で投げる。
『あじゃあじゃあ……Zzz……』
「眠った!?」
「まさかラリホー?」
「なんだぁ、ラリホーって? リッキーボールタイプSだよ」
S=スリープか。
「こんなもんじゃないぜ! リッキーボールタイプF!」
誰得な寝顔を見せながら眠ってるリキシに投げられたリッキーボールは、当たったと同時に燃え上がる。
「F=ファイアとかフレイムとかその辺だよな」
「まだまだあるぞ。ただ消耗品だからな、魔法と違って回復できないのが痛いな。この世界じゃ魔法の代わりになるだろう」
確かにリッキーボールシリーズは様々な効用があるみたいだ。今見せてくれた奴の他にもあるのだろう。
「ひとつ質問。回復用はあるの?」
「回復? 薬草で我慢しろ」
「「はっ?」」
イマナントオッシャイマシタカ?
「リッキーボールに体力回復の効能はねえ。怪我したら薬草。常識だろ?」
「てことは何? ホイミないの?」
「ニフラムとかザキは無理があるなとは思ってたけど、回復も消耗品とは……」
「「どうしましょ」」
タダでさえお金を稼ぐのが大変な世界なのに、薬草を優先的に買わないといけないとか……。
「でもそんな心配いらないぞ? こっから西に行ったところに薬草園って所がある。そこでローズの婆さんが品種改良した薬草を育ててるんだ。事情を話したら貰えそうだけどな」
「薬草園? 近いの?」
「まあ少し歩くが、でも水の紋章がある大王イカの祠もそっち側だ。ちょうど良いんじゃないか?」
水の紋章か。大王イカの祠ってもうボスがどんなのか分かったんだけど……。
「意外とイカ娘みたいなのかもしれないんじゃなイカ?」
「雑魚キャラがリキシの時点でそれはないよ」
「なに言ってるんだ? まあ良い。餞別だ、持ってけ!!」
リッキーさんはそう言ってリッキーボールを投げて――
「あっ、オンのままだわ」
チュドーン!
漫画みたいな効果音とともに爆散する。……、爆発は計画的にお願いします……。