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その幻想をなんたらこんたら!

 駆け出し勇者の姉さんとその騎士の僕は、冥界へのスタンプラリーをすべく、風の紋章を手に入れるために、西方にある風の谷ウインドキャニオンを目指すことにする。


「城下街の外はこうなってんのね」

 トンネルではなく、大門を抜けた先には、見渡すかぎり草原という、フィールドが待っていました。

「モンゴルの草原みたいだな……」

「確かにそうかも。あれってゲルって言うんでしょ?」

 東方には遊牧民でもいるのだろうか、遠めにだけどチラホラと白いテントのようなゲルが見える。


「とりあえず僕らが目指すのは反対方向だね。いずれ向こうに行くだろうし、その時のお楽しみってことでさ」

 サクサクプレイが目標なんだ、余計なことはしないことが吉だろう。


「それじゃあ、レッツラゴー!!」

 姉さんは剣を高く掲げて一歩を踏み出す。大いなる一歩を、

『アジャアジャアジャ!!』


「「なんじゃこりゃあああああああああああああああ!!!」」


 リキシが現れた!!


「ってリキシってなんだよっ! 初っ端ってスラ○ムが定石だろうが! なんで最初からニフ○ムが使えなさそうなモンスターが出てくんだよっ!」

 そう、RPGの世界なんだから、モンスターがいて当然だと思っていたが、


『アジャアジャアジャ!!』


「フィールドを歩いたら力士が出て来るってどうゆうことだあああああ!!」

「こう君、構えて!」

 会心のツッコミを繰り返す僕を尻目に、姉さんはブロンズで出来た剣を構える。

「槍なんて使ったことないって!」

 とりあえず、無双の幸村の構えを脳内で再現してその通り構えてみる。

「なかなか様になってるよ! それじゃあいくよ! さあ、懺悔の時間だぁ! 」

 決めゼリフらしきものを叫び、姉さんは猛スピードでリキシに向かっていく!

「ダァーッ!」

 姉さんの剣が振りかかるっ!

『アジャ』

 リキシは……、弓矢を撃ってきた。



「せめて突っ張れやああああ!!」

「きゃあっ!」

 いきなりの遠距離攻撃に姉さんは可愛い悲鳴をあげてたじろぐ。その瞬間をリキシ達は見逃さなかった!

『アジャ!』

 リキシの突っ張り!

「させっかよっ!」

 姉さんに体重に身を任せた突っ張りをしてきたリキシに槍で突きを入れる。リキシは勢いのまま槍に突っ込んでいき、

『アジャああああ!!』

 背筋も凍るような世にも恐ろしい断末魔をあげて消滅していく。

「こう君サンキュ! それじゃあ反撃よ!」

 姉さんは立ち上がってリキシ達に立ち向かう。僕も槍を構え突進するっ!


『アジャアジャアジャ!』

 リキシ達は再び弓矢でこっちを撃ってきた!


「なんで揃いも揃って近接系なんだよっ! いてっ! モンスターの癖に弓矢とか生意気だぞ!」

「こう君どいてっ! はああああ!! エクス、カリヴァー!!」

「いやその剣ブロンズ製だからね!」

 気分の問題だろうけど、アーサー王の伝説の剣の名前を叫んでリキシ達を薙ぎ払っていく。

「僕もゲイボルグっていったらいいのかアーッ!」

 リキシがこっちにぶっ飛んで来る。団子を刺す要領で、ゲイボルグ(仮)でめった刺しにする。リキシ団子いっちょあがり!


『アジャああああ!!』

 筆舌にしがたい絶叫と共にリキシ達は消滅していく。


「次生まれるときは、友達になりたいものね」

 姉さんは雰囲気に酔っている。早くも勇者気取りだ。

「姉さん、これっ」

 リキシとの戦闘で傷ついた体を薬草で癒す。レベルも低いし、自分の体力がどれだけあるかもハッキリしないから、マメに使うべきだろう。回復魔法でも覚えたら楽になるのかな。


 チャララチャララチャッチャッチャーチャチャラチャッチャッチャ


「ラディツキー行進曲?」

 突如頭の中にファンファーレというか行進曲が流れる。

「な、なんなの?」

 姉さんの頭にも流れているみたいだ。これは一体……?


「レベルアップ?」

「何故にラディツキー?」

 敵を倒したら流れたんだから、おそらくそうだろう。リキシがスラ○ムポジションだとしても、5体ぐらいいたんだ、経験値もそれなりに入るはずだ。


「あんまり強くなった気がしないけどな……」

「最初だし分かりにくいんじゃない? リキシ相手が楽になったらレベルアップってことで」

 改めてステータスという概念の大切さを思い知らされる。


「この辺でレベル上げをしようよ。調度谷までの間に小さな町があるし、そこらを拠点にしよう」

「そうだね。リキシ狩りでもしよっか」



――



『アジャああああ!!』


「姉さん、ずっと気になってたことがあるんだ」


『ウェイヘヘッ!!』


「奇遇だね……、私も一つ納得のいかないことがあるんだ」


『デエエエ!!』


「「こいつらお金落とさなくね……」」


『アジャあああああ!!』


 いや、確かに常々おかしいとは思ってたよ? なんでモンスター倒したらお金が手に入るんだって。


「こう君、そろそろ薬草なくなるよ?」

「これ宿に泊まるお金ないよね……」


 また詰んだ……。

「落とすといったら、こんなんばっかだし……」

 モンスターを倒すと、お金の代わりになんらかの物を落として消える。

「化粧品でどうしろと……」

 例えばリキシをたおすと、何故か化粧品を落とす。実はメスしかいないのかな?

「あ、もしかして……」

 姉さんは何か思い付いたらしい。

「お金が欲しけりゃこれを売れってことかな?」

 姉さんはリキシ印の化粧品を見て言う。

「んな手間がかかること……」



――



「全部で600Gになりますが売りますか?」


「「……、お願いします」」


 今日知ったこと。モンスターがお金を持ってるんじゃなくて、モンスターの持ち物を売ってお金を手に入れるんですね。ゲームではその作業が怠いから省くんですね、良く分かりました。


 サクサクプレイ無理じゃね?

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