表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/120

EP 35

『竜人の決意と、倉庫の特殊部隊(S.W.A.T)』

ライブの熱狂が去った後の静けさ。

イグニスは、キラキラと輝く紙吹雪が落ちている地面を、呆然と見つめていた。

「すげぇな……パイセン……。あんなに輝いて……」

彼の脳裏には、観客を熱狂させ、光の中で歌うリーザの姿が焼き付いていた。

それに比べて、自分はどうだ。

「俺様は……俺様はなんだ? テント村で、炊き出しの豚汁食べて、毎日鳩を見つめてるだけじゃないか……!」

最強の竜人族として里を出たはずが、気づけば鳩と友達になりかけている。

悔しさと情けなさで、イグニスの拳が震えた。

「どうした? イグニス」

声をかけたのは、ライブの撤収作業を指示していたマモルだった。

イグニスは弾かれたように顔を上げ、マモルに詰め寄った。

「ま、マモル様! ど、どうか! 俺様に仕事をくれ!」

「仕事?」

「ああ! 俺様だって一旗上げたいんだ! いつまでも『その他大勢』じゃ嫌だ! 俺様も……パイセンみたいに『主人公』になりたいんだよ!」

イグニスの目には、本気の炎が宿っていた。

マモルは少し考え込み、ニヤリと笑った。

「……キツイ仕事が有るが、耐えられる?」

「あぁ! 何でもする! 岩砕きでもドブさらいでも!」

「よし! ついてこい」

***

マモルが案内したのは、港湾地区の端にある古びた倉庫街だった。

窓ガラスは割れ、看板も錆びついている。煌びやかなアルニアの街並みとは対照的な場所だ。

「ここは……? 廃墟か?」

「いや、『S.W.A.Tスワット』本部さ」

マモルが錆びた鉄扉を押し開ける。中は薄暗く、埃っぽい匂いがした。

「す、すわっと?」

「ま、警察って言えば良いのかな? まだ予算が降りなくってね、建物はボロいけど」

マモルは倉庫の中央にある、急ごしらえの作戦テーブルに手をついた。

「騎士団はあくまで『軍隊』だ。戦争には強いが、街中で暴れる犯罪者を捕まえたり、人質を救出するには小回りが効かなくてね。それに、火力が強すぎて街を壊しちゃう」

「……なるほど(俺も門を壊したしな)」

「だから、軍隊とは違う、対犯罪者・対テロリスト専門の特殊部隊を作ろうと思ってたんだ」

その時、倉庫の奥からカツカツと足音が響いた。

現れたのは、レオパルド騎士団長だ。彼はいつもの煌びやかな鎧ではなく、動きやすい黒いタクティカルベスト(試作品)を身に着けていた。

「マモル様? どうされたのですか? こんな夜更けに」

「よお、レオパルド。S.W.A.Tに良い人材を連れてきた」

マモルがイグニスを示す。

「イグニスだ。やる気と体力だけは有り余ってる」

「よ! よろしくお願いします! 俺様はイグニスだ!」

イグニスが直立不動で頭を下げる。

レオパルドは鋭い獣の瞳で、イグニスの身体つきをじっくりと品定めした。

太い首、強靭な四肢、そして竜人特有の頑丈な鱗。

「ほう、竜人族か……」

レオパルドは髭をさすり、満足げに頷いた。

「悪くない。最前線でバリスティック・シールド(重盾)を持たせ、突入させるにはうってつけだ。ドアブリーチ(扉破壊)担当……『ブリーチャー』だな」

「ぶりーちゃー?」

「ああ。一番最初に危険な部屋に飛び込み、仲間を守る壁となる役目だ。度胸と頑丈さが求められる」

「だろう? こいつならロケットランチャー撃ち込まれてもピンピンしてるよ」

マモルが笑う。イグニスは自分の拳を握りしめた。

一番最初に飛び込む。仲間の盾になる。

それは、まさしく「主人公」のポジションではないか。

「やります! そのブリーチャーってやつ!」

「よし」

レオパルドの表情が、軍人のそれから、さらに厳しい「教官」の顔に変わった。

「貴様を鍛えてやる。ただし……騎士団の訓練など生温いと思え。マモル様から教わった、この『S.W.A.T式トレーニング』は地獄より辛いぞ? CQB(近接戦闘)、人質救出、爆発物処理……覚悟しろ」

「あ、ありがとうございます! 望むところだ!」

「いい返事だ! では早速、その辺のタイヤを腰につけてランニングだ! 行けェッ!」

「イエッサー!!」

古びた倉庫に、イグニスの野太い声が響く。

鳩を見つめていた無職の竜人は今、街の平和を守る「特殊部隊員」としての第一歩を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ