EP 30
『ファミレスの朝食と、ワンクリック討伐受注』
朝日が差し込む大通り。
キャルルは鼻歌交じりに、お気に入りのファミリーレストラン『アルニア・キング』の自動ドアをくぐった。
「いらっしゃいませー! お好きな席へどうぞー!」
店員の元気な声。キャルルは窓際のボックス席に座ると、慣れた手つきでテーブルに置かれた注文用タブレットを起動した。
「えっと、今日は……やっぱりこれね。ポチッ」
迷わず選んだのは『モーニングセットA』。
トースト、目玉焼き、そして山盛りの人参サラダがついた、彼女のためのようなメニューだ。
注文を送信すると、キャルルはポケットから『魔導通信石』を取り出した。
ロック画面(壁紙はマモルの寝顔)を解除し、ブクマしてある『冒険者ギルド・公式ジョブネット』を開く。
「さてと~、今日の稼ぎ時は~……」
画面をスクロールする指先が止まる。
【緊急クエスト:オーガの突然変異体(変異種)の討伐】
【推奨ランク:A以上】
【報酬:200,000イェン】
【場所:北の岩場】
「へぇ、オーガの変異種かぁ。ちょっと硬そうだけど……報酬は20万円か」
キャルルはニヤリと笑った。
20万あれば、新作のコスメも買えるし、リーザに高いお肉をご馳走してあげられる。
「よーし、も~らい!」
画面上の【受注する】ボタンをタップ。
『受注完了しました。現地へ向かってください』というポップアップが表示された。所要時間、わずか3秒。
「お待たせしました~! モーニングセットAです!」
タイミングよく、店員がトレイを運んできた。
焼きたてのトーストの香ばしい匂い。半熟の目玉焼き。そして、鮮やかなオレンジ色の人参サラダ。
「ありがとうございます!」
キャルルは席を立ち、ドリンクバーへ向かった。
グラスに氷を入れ、まずは「濃厚人参ジュース」を半分まで注ぐ。そして、その上から「炭酸メロンソーダ」を注ぎ足した。
「ふふっ、キャルル特製・キャロットメロンソーッシュの完成!」
席に戻り、手を合わせる。
「頂きまぁす!」
まずはサラダを一口。シャキシャキとした人参の甘みが口いっぱいに広がる。次にトーストに黄身を絡めて頬張り、特製ジュースで流し込む。
「ん~っ! 美味しいぃ! 朝のエネルギー充填完了って感じ!」
優雅なBGMが流れる店内で、これから化け物を殺しに行くとは思えないほど、穏やかな朝食タイムを楽しんだ。
***
完食後、キャルルは伝票を持ってレジへ向かった。
「お会計、480イェンになります」
「あ、MRコード(マジック・レスポンス・コード)*で」
「かしこまりました」
キャルルが通信石の画面に表示されたQRコードを差し出すと、店員が読み取り機をかざす。
『マモルペイ♪』という軽快な決済音が鳴った。
「ありがとうございましたー!」
店を出たキャルルは、その足で隣にある『アルニア・コンビニ』へと入った。
チャラララララ~♪(入店音)
「えっと、お昼ご飯は……鮭オニギリと、ツナマヨ。あと予備の回復薬(人参ジュース)も買っておこうかな」
棚から商品をピックアップし、再びセルフレジでササッと会計を済ませる。
レジ袋をぶら下げた彼女は、店の外に出て大きく伸びをした。
「さてと! 腹ごしらえも買い物もバッチリ!」
キャルルは安全靴の紐をキュッと締め直し、北の空を見上げた。
「サクッとオーガ退治して、お昼には帰ってこようっと!」
彼女は地面を蹴った。
次の瞬間、その姿は疾風となり、通勤ラッシュの街を駆け抜けていった。




