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EP 24

『砕かれた魔剣、喝采の勇者』

「行くぞッ!」

マモルの裂帛の気合いと共に、伝説の三節根『王帝』が唸りを上げた。

(デュラスが直前に「木の棒では死ぬぞ」と返してくれた本物だ。今の俺なら、この相棒の全力を引き出せる!)

マモルは正面から突っ込んだ。対する魔王サルバロスは、不敵な笑みを浮かべて漆黒の魔剣を振るう。

「力比べか? 愚かな!」

ガギィィィンッ!!

重金属の衝突音が闘技場を揺らす。

サルバロスの腕力は山をも砕く。まともに受ければ、マモルの身体など吹き飛ぶはずだった。

だが、マモルは瞬時に思考を切り替える。

(力と力では負ける……『合気』だ。流れを感じて、流すんだ!)

「ぬ!?」

サルバロスが違和感に眉を寄せる。

渾身の力で押し込んだはずの魔剣が、ヌルリとマモルの三節根の表面を滑ったのだ。

「そこだ!」

マモルは受け流した勢いを利用し、回転しながら三節根の端をサルバロスの足首に絡ませた。

「なっ!?」

「失礼!」

マモルが軽く引くと、前のめりに力の入っていた魔王の巨体が、呆気なく宙を舞った。

ズドォォォォン!!

「ぐっ……糞ッ!」

魔王サルバロス、まさかの尻餅。

闘技場に土煙が舞い、一瞬の静寂の後、観客席からどよめきが起きた。

「お、おい見たか……? 魔王様が転ばされたぞ……」

「信じられん……尻餅をつく魔王様なんて初めて見た……」

「バ、バカ! 滅多なことを言うな! 殺されるぞ!」

魔族たちが恐怖で顔を見合わせる中、サルバロスはゆらりと立ち上がった。

その顔は怒りに歪んでいるかと思いきや――歓喜に満ちていた。

「ククク……ハハハ! やってくれる! ならば俺も、本気で応えねば失礼というもの!」

ドオオオオオオオッ!!

サルバロスの全身から、どす黒い奔流のような『魔気』が噴き出した。

重力が倍になったかのような圧力が闘技場を支配する。

「ひ、ひいいっ!」

「腰が……立てない……!」

観客たちが泡を吹いて気絶し、震え上がる。これが世界を恐怖させる魔王の真の力。

「強い……やっぱり、魔王なんだな」

マモルは冷や汗を拭いながら、三節根を構え直した。肌が焼けるような殺気。並の精神力なら、立っているだけで心臓が止まるだろう。

「まだまだ……こんな物じゃないぞ、勇者よ」

サルバロスは全ての魔気をその身に凝縮させ、一歩、また一歩とマモルに近づく。

「次で決める。……一撃勝負か」

マモルは悟った。小細工はもう通じない。

サルバロスもまた、最強の一撃でマモルを葬るつもりだ。

「分かった。小細工抜きだ。俺も……この一撃に全てをかける」

マモルは深く息を吸い込み、静止した。

『王帝』に全神経を集中させる。

荒れ狂う感情を鎮め、心の中を「無」にする。

ゼロの状態から、インパクトの瞬間に最大出力を叩き込む。特訓で掴んだ『静と動』の極意。

「……」

「……」

両者の間合いが極限まで詰まる。

世界から音が消えた。

「――死ねぇぇぇいッ!!」

サルバロスが動いた。

電光石火の踏み込み。視認不可能な神速の抜刀術が、マモルの首を狙って閃く。

マモルは引かない。

魔剣の軌道を見切り、その刃の腹めがけて、全闘気を込めた『王帝』を叩きつける。

「はあああああッ!!」

パァァァァァァァンッ!!

閃光が炸裂し、観客たちの視界が白く染まった。

衝撃波が結界を突き破り、闘技場の壁に亀裂を入れる。

やがて、光が収まると。

そこには、三節根を振り抜いた姿勢のマモルと、立ち尽くすサルバロスの姿があった。

「……」

サルバロスの手には、柄だけになった剣が握られていた。

刀身は粉々に砕け散り、キラキラと地面に降り注いでいる。

「……俺の、負けか」

サルバロスはガクリと膝をついた。

肉体に傷はない。だが、全霊を込めた魔剣ごと闘気を砕かれ、今の彼は指一本動かせない「死に体」だった。

「み、見事だ……勇者よ」

魔王の口から漏れた、完全なる敗北宣言。

その瞬間。

「うおおおおおおおおおおッ!!!」

静まり返っていた闘技場が、爆発的な歓声に包まれた。

魔族も、人間も関係ない。

ただ純粋に、魔王をも超える強者の誕生に、観客たちは熱狂し、拳を突き上げた。

「マモル! マモル! マモル!」

地鳴りのようなマモルコールの中、マモルはふぅと息を吐き、勝利のピースサインをフィリアたちに向けた。

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