EP 20
『没収された神器と、闘気付与のスパルタ教室』
マモルの自宅の庭は、もはやこの世の風景ではなかった。
右手には神々しい光、左手には禍々しい闇。
エルミナが優雅に杖を掲げ、高らかに詠唱する。
「天翔ける光獅子――ラオン、降臨せよ!」
光の粒子が集束し、背中に巨大な翼を持つ、白銀の獅子が現れた。その威圧感だけで、並の人間なら気絶するレベルだ。
「死肉を喰らう魔獣――グラング、出ろ!」
対するデュラスも負けじと指を鳴らす。
地面からドス黒い泥が吹き出し、分厚い甲羅と棘に覆われた巨大な亀のような魔獣が這い出した。
二体の化け物に挟まれたマモルは、引きつった笑顔で呟く。
「……冗談だよな? これ、特撮の撮影か何かだよな?」
「頑張れ~、マモル~♡ 負けないで~♡」
安全圏(テラス席)から、フィリアがポンポンを持って黄色い声援を送る。その笑顔が今は逆に怖い。
「では私から♡ 行きなさい、ラオン」
エルミナがウインクと同時に指差した。
光獅子ラオンが大きく口を開ける。
カッ……!
「ヒエエッ!?」
放たれたのは、鉄塔をも溶解させる極太の破壊光線。
回避不可能。マモルは咄嗟に、愛用の武器である伝説の三節根『王帝』を構え、回転させた。
「うわあああ! 頼むぅぅぅ!!」
キィィィィィン!!
王帝が眩い輝きを放つ。
古代の秘宝であるその武器は、ラオンの光線を自動的に弾き返した――しかも、あらぬ方向へ。
ズドォォン!!
「ギャァッ!?」
跳弾した光線は、横で待機していた魔獣グラングの眉間を正確に貫いた。
哀れグラングは、何もせずに光の粒子となって消滅した。
「……あ」
マモルが呆然とする中、デュラスが冷徹に歩み寄ってきた。
「全く……嘆かわしい」
「えっ、倒したじゃん! すごくない!?」
「『王帝』の力だけではないか。貴様自身の力は何一つ乗っていない」
デュラスはマモルの手から、輝く三節根『王帝』をひったくった。
「没収だ。それは」
「そ、そんな~! 俺の相棒がぁぁ!」
「代わりにこれを使え」
デュラスが放り投げてきたのは、ホームセンターの資材売り場にありそうな、ただの樫の木で作られた『練習用三節根(量産品)』だった。
「軽っ! 脆っ! こんなのであんな怪獣と戦えって!?」
マモルが抗議すると、フィリアがテラスから身を乗り出してアドバイスを飛ばした。
「マモル! 闘気はね、身体の中だけじゃなくて、自分や武器に『付与』して強化出来るのよ!」
「付与……?」
「そう! その木の棒を、マモルの闘気で包み込んで『最強の剣』にしちゃうの!」
「だから、それはお前のセンス次第だ」
デュラスが腕を組み、冷酷に告げる。
「真の達人は、木の枝一本で鋼鉄を断つ。武器の性能に甘えるな。……さあ、グラングは死んだが、ラオンはまだ元気だぞ?」
「グルルルル……!」
光獅子ラオンが、獲物を逃した怒りで爪を立てている。
手元には、心もとない木の棒が一本。
「くそっ、やるしかねぇのかよ……! 見てろよ、この木の棒をエクスカリバーにしてやる!!」
マモルは覚悟を決め、安物の三節根を構え直した。
スパルタ特訓は、ここからが本番であった。




