表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/120

EP 17

『コタツ会談、親父の激怒』

湯気を立てる鍋と、まだ封を切られていない最高級の酒。

外は寒風が吹き荒れているが、コタツの中は温かい。

だが、その四辺を囲む者たちが放つ空気は、絶対零度のように張り詰めていた。

マモルは、目の前に座る世界の頂点――女神、魔王、竜王の三柱を静かに見据えた。

「さて……三柱の方々。酔っ払って訳が分からなくなる前に、アルカについてお話をしましょうかね」

マモルは箸を置き、穏やかだが、決して目を逸らさない強い視線で切り出した。

「彼女が何処で暮らすのが、一番幸せになるのか」

その言葉に、ルチアナがスルメを齧る手を止める。

サルバロスが不敵に口角を上げる。

ドラグニールが杯を置く。

マモルは核心を突いた。

「単刀直入に聞くけど……あんたらはアルカが欲しい。違うか?」

沈黙が落ちる。

最初に口を開いたのは、ジャージ姿の女神ルチアナだった。彼女の声からは、先ほどまでのふざけた調子が消え、冷徹な管理者の響きが混じっていた。

「ん~~……そうね。私は世界の管理者として、『イレギュラー』が起こるのが嫌なのよ。彼女の力はバランスを崩す。だから、私の監視下に置いて封印したい立場ね」

「封印、か」

マモルが眉をひそめると、次にドラグニールが重々しく腕を組んだ。

「我らは違うぞ。あの方は同胞だ。始祖竜様を我が竜人族の里にお迎えすれば、より相応しい力の使い方を教えることができる。それが彼女の誇りとなろう」

「……だからさ」

マモルはドラグニールの言葉を遮った。

「アルカは『始祖竜』じゃねぇんだ。もう、アルカはアルカだ。意思を持ってる、ただの女の子なんだよ」

その言葉を鼻で笑ったのは、魔王サルバロスだ。

「甘いな、マモル。力ある者は、その力を行使してこそ輝く。……俺は、面白ければ良い。アルカを俺の元に寄越せば、世界をもっと面白くしてやる。破壊と再生、アルカもその刺激を喜ぶさ」

「嘘を言うなよ」

マモルの声のトーンが、一段階下がった。

コタツの下で、彼の拳が強く握りしめられる。

「あんたらがそうやって、互いの正義だの欲望だので喧嘩し続けた結果が、今の戦乱の世になったんだろ? 世界を面白くするどころか、混乱させてるだけじゃないか」

「……ほう?」

サルバロスの目が細められ、強烈な殺気が部屋を満たす。

だが、マモルは怯まない。むしろ、それを押し返すほどの熱量で、彼らを睨みつけた。

「俺は怒ってるんだ」

マモルは立ち上がりはしなかったが、その魂が叫んでいた。

「あんな小さい、まだ何も知らないアルカに全部を押し付けて……自分達の都合や欲望の道具にしようとすることに、腹が立って仕方がないんだよ!」

脳裏に浮かぶのは、朝、眠そうに目を擦るアルカの顔。

不器用に箸を使ってご飯を食べる姿。

マモルの背中にしがみついてくる温もり。

「封印? 教育? 娯楽? ……ふざけるな」

マモルは三柱を指差し、言い放った。

「アルカの生き方はアルカが決める。あんたらじゃない」

部屋の空気が振動する。

ただの人間であるはずのマモルが放つ気迫に、神々が一瞬、言葉を失う。

「勝手にアルカの道を決めてんじゃねぇよ。あの子は兵器でも道具でもない。……俺の、家族だ」

マモルは一息つくと、封を切っていなかった酒瓶を掴み、ドン!とテーブルに置いた。

「話は以上だ。……文句があるなら、俺が全部聞いてやる。その代わり、アルカには指一本触れさせない」

それは、世界最強の三柱に対する、あまりにも無謀で、しかし揺るぎない宣戦布告だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ