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EP 6

『異界の知識と、マグナ・ライフルの胎動』

仮設の執務室(ガンツ製プレハブ・魔法断熱仕様)には、重苦しい空気が漂っていた。

騎士団長レオパルドが、地図上の赤い印を指し示しながら報告を終える。

「――以上が、魔物が家畜を襲い、開拓民に被害が出た件の概要になります。我ら騎士団が急行し、当該のオーク集団は駆逐しましたが……」

レオパルドは悔しげに拳を握りしめた。

「到着までのタイムラグにより、数頭の牛と、納屋一軒が破壊されました。人的被害が軽傷で済んだのは奇跡と言えましょう」

マモルは腕組みをして唸った。

「やっぱり、外は危険がいっぱいだなぁ。いつ、どこに魔物が現れるか分からないなんて」

「うむ。領地が広がれば広がるほど、監視の目は疎かになる」

デュラスが冷静に戦力分析を加える。

「騎士団は精鋭だが、数が足りん。かといって、農民を兵士に育てるには時間がかかりすぎる。剣術も弓術も、一朝一夕で身につくものではないからな」

「そうですねぇ……。予算で傭兵を雇うにも限界がありますし、質も保証できません」

エドガーも眉間の皺を深くして同意した。

安全が保障されなければ、新しい住民も定着しない。これは領地経営の根幹に関わる問題だった。

「誰でも、すぐに扱えて、強い武器があればいいんだけど……」

マモルは独り言のように呟くと、手元のノートパソコンを操作し始めた。

「俺の世界では、『銃』っていうのがあってさ。これなんだけど」

画面に表示されたのは、アサルトライフルやハンドガンの鮮明な画像と、その内部構造図。

それを見た瞬間、エドガーの目の色が変わった。

「……貸して見なさい!」

「うわっ、エドガーさん!?」

普段の礼儀正しさはどこへやら、エドガーはマモルからパソコンをひったくるようにして画面に顔を近づけた。

「……なんと。火薬の爆発力を利用して金属のつぶてを飛ばす……? 弓のような筋力も、魔法の詠唱も不要……ただ『引き金』を引くだけで、子供でも殺傷能力を持てると!?」

「おい、俺にも見せろ!」

次に食いついたのはガンツだ。彼はエドガーの横から強引に割り込み、職人の目で構造図を貪るように見つめた。

「ほう……筒の中にライフリング(施条)を刻んで回転を加えるだと? こいつはすげぇ。命中精度が桁違いだぞ」

背後から覗き込んだデュラスも、興味深そうに顎を撫でる。

「これは……構造としては『魔砲』に近いか? だが、あんな巨大な兵器をここまで小型化できるものなのか?」

この世界にも大砲のようなものは存在するが、それは巨大で、運用には数人の魔導師を必要とする代物だった。だが、マモルが見せたのは「個人携行」できる兵器だ。

「火薬ってのがネックだな。この世界じゃ安定供給が難しい」

ガンツは髭をいじりながら思考の海に沈む。だが数秒後、その瞳がギラリと怪しく輝いた。

「だが、理屈はわかった。爆発力があればいいんだろ? なら、火薬の代わりに『凝縮魔石』を使って、俺のルーン技術で加速回路を組み込めば……」

ガンツの中で、異世界の知識とドワーフの秘儀が化学反応を起こした。

「良し! 俺の技術を合わせて、『マグナ・ライフル』を作ってみるか!」

「マグナ・ライフル……?」

マモルが聞き返すと、ガンツはニヤリと笑い、豪快に設計図を引き始めた。

「ああ。魔力を弾丸に変えて撃ち出す、次世代の魔導銃だ。リロードは魔力を込めるだけ。これなら弾切れの心配もねぇし、威力も調整できる。マモルの旦那、こいつは軍事革命だぜ!」

「おおお! 素晴らしい! これなら非力な一般市民でも自衛が可能です!」

エドガーが興奮してステッキを振り回す。

「よし、レオパルド殿! 直ちに警備隊の編制を! ガンツ殿、試作機の完成はいつです!?」

「明日には初号機を持ってきてやるよ。寝てる暇なんかねぇ!」

盛り上がる大人たちを前に、マモルはぽかんと口を開けた。

(えぇ……なんか俺が思ってたのと違う、すごいSFチックな武器になりそうなんだけど……ま、いっか)

こうして、マモル公爵領の名物となる最強の自衛兵器が、産声を上げようとしていた。

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